48歳の山本昌 長寿の秘訣にはトップアスリートとの共通点があった
山本昌の強さを生み出している秘密とは?
では、その強さを生み出しているものとは何か。秘密は山本の自主トレにあった。
ベテランは、オフになると鳥取にあるワールドウイングというトレーニング施設を訪れる。そこにあるのは、山本のために数億円をかけて開発したトレーニング機器だ。肩甲骨の可動域を広げ、動きをスムーズにさせるものや足首を強化するものなど、山本昌の体に合わせた特注機器が揃う。そこでもたらされる効果は肉体の強化だけではない。球の回転数が増え、130キロ後半の直球でも、打者がより速く感じるボールが投げられるようになるという。
この施設自体にも、「長寿」との関連性があるようだ。38歳にして日本歴代1位の通算セーブ数を誇る中日のクローザー、岩瀬仁紀投手も同施設を使用。4000安打を達成したヤンキース・イチローも、山本と同じ器具を試している。
また、男子ゴルフの「ザ・レジェンド・チャリティプロアマ」でエージシュートを達成した70歳の青木功プロも通う。年齢の壁を乗り越えて大きな記録を樹立するアスリートが何人もこの施設を利用している事実は、単なる偶然とは言えないだろう。
ワールドウイングは日本陸上連盟や日本水泳連盟のコーチなどを歴任し、初動負荷理論を提唱する小山裕史氏が代表を務めている。同理論をもとにして、運動の発動時に起きる力を利用し、自然な形で筋肉を強化するトレーニングにイチローらも共感。現在では一般的にも認知され始め、高齢者の体のケアにも利用されている。
そこでトレーニングに励む山本は、人一倍、自分の体と向き合い、怪我をしにくい体を築き上げてきた。その結果、長寿アスリートの一人となり、プロ30年目のシーズンを迎えることができたのである。
ファンにとっては生きる伝説のピッチングを見るだけでも価値があるかもしれないが、本人は自分の投球にプライドを持つ。勝っても、「今日の内容ではだめだ」と反省し、勝負と投球の質を常に意識する。だから、今季の5勝2敗という結果にも満足しない。
記録のためだけに投げるのではなく、戦力となることや理想の投球にこだわる姿勢。それらがある限り、ベテランはさらに進化した肉体を追い求めていくことだろう。プロ31年目となる来年は49歳。その先の50歳での先発勝利も夢ではない。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count