大騒動を巻き起こしたレイズのデビット・プライス
不祥事が逆にレイズの魅力を際立たせる
メジャーを代表する左腕が大騒動を巻き起こした。レイズのデビッド・プライスが5日のレッドソックスとの地区シリーズ第2戦に先発したものの、7回7失点と打ち込まれた。2連敗と追い込まれた痛恨の一戦のあと、ツイッターで自分のことを批判したメディアを「NERDS」呼ばわりして波紋を呼んだのだ。全国紙USAトゥデーも、一連の出来事を大きく報じている。
NERDの意味を辞書で調べると「スポーツが苦手で社交性に欠けるタイプの人のことを幅広く指す言葉」と出る。プライスはデビッド・オーティズに2本塁打を浴びるなどして大量失点を喫したことにイライラを募らせた上に、その投球内容をTVで記者や解説者に批判されたことに腹を立てて“悪態”をついたと見られる。昨年のサイ・ヤング賞左腕のツイッターはファンから人気があり、度々、登場する愛犬は全国的な知名度を誇るほどだ。それだけに、波紋も大きかった。
レイズのジョー・マドン監督は6日、練習後に取材に応じ、チームに携わる人間の表現の自由を重視するとしつつ、対策に乗り出すことを示唆。「来年のスプリングトレーニングでは、メディアトレーニングを行う。今回のことをやってはいけないことの完璧な例とするつもりだ」と、チームとして再発防止を目指す姿勢を見せた。
この日は自由参加の練習だったため、大半の選手が欠席していた。そのうちの1人だったプライスも、夜になって再びツイッターでつぶやき、今度はファンらに丁重に謝罪。「昨夜、自分がここで述べたことを謝罪したい。もしあなたたちを怒らせてしまったのなら、本当に申し訳ない」と心から反省した様子でつづった。メディア対応も選手の仕事の1つとされ、評価基準の1つとされるメジャーリーグでは、あまりにも軽率な行為だったと言える。
ただ、選手の自主性を重んじることで知られるマドン監督は、チームを変えるという行為そのものよりも、今回得た教訓の方が重要だと指摘する。
「たった1つの偶発的な出来事をもって、何かを変えようとは思わない。私は(誰かの)行動を規制することが本当に嫌いだ。私はデビッドの色んな顔を知っている。デビットは今回、過ちを犯した後に正しいことをした。物事の違う側面を知り、よりいいものにするために、たまには過ちを犯すこともある。それが将来的にはよりいい判断を下すことにつながると信じている」
温かい人柄で知られる名将は、しっかりと反省を促しつつも、エースを見捨てることは決してしなかった。指揮官と選手が信頼で結ばれるレイズ。不祥事がその魅力を浮かび上がらせる形となったのは、このチームならではの結末と言えるだろう。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count