巨人の次世代スター候補 中井大介を覚醒させた事件とは
大失態で中井から一切の甘えが消えた
この大失態から中井の中で一切の甘えが消えた。将来を有望視され、入団当時から2軍で積極的に起用されてきた。その間、1軍に上がっては結果が出ずに2軍に戻る繰り返しだったが、チャンスは常に与えられていた。だが、寝坊事件でもう後がなくなった。野球選手はプレーで信頼を取り戻すしかない。「もう2度としません」と誓った中井の顔つきは明らかに変わった。
この一件で浮き彫りになったのは中井の精神的な強さだ。原辰徳監督の意向により、10日間の登録抹消後に再昇格を果たすと、自身が犯した行為を反省した上で「ファンから目覚まし時計をいただきました」、「もう眠るのが怖いですよ」と公言。失態をネタにして、世間に話題を提供した。
ナインもそのハートの強さに便乗。本拠地の打席に入る際の登場曲を人気グループSPPEDの「WAKE ME UP」にこっそり変更し、笑いを誘うことで中井を盛り上げた。
追い込まれた男は強かった。7月7日の横浜DeNAベイスターズ戦(東京ドーム)で決勝の2ランを放つなど、徐々に活躍。非情通告を下した首脳陣も、その一件以降、中井の変化を感じ取り、信頼を寄せ始めた。
今季、中井が覚醒した理由はもう1つある。日本ハムの1番打者、陽岱鋼に憧れ、刺激を受けたことだ。交流戦中にバットをもらう機会があり、以後、そのバットを使用。陽のようにバットを高く構え、上から叩き付ける意識でバッティングをすると、強い打球が飛ぶようになり、ホームランも出始めた。
現在つけている背番号61は、今や巨人の主力選手となった坂本勇人が以前、背負っていた番号。中井が宇治山田商(三重)から2007年の高校生ドラフト3巡目で指名を受けた際、球団側が坂本のように飛躍してほしいと願い、用意したものだ。
一歩ずつではあるが、23歳はその期待に応えつつある。スター選手への道は決して平坦ではないが、精神的にも技術的にも向上した男は近い将来、巨人の主力として活躍するかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count