昨オフに新設された「クオリファイリング・オファー」の活用法

今季の規定額は1410万ドル(約14億円)

 2年目を迎える「クオリファイング・オファー」の使い方が鍵となる。米紙ニューヨーク・ポストは、フリーエージェントになるカーティス・グランダーソンに対して、所属球団のヤンキースがクオリファイング・オファーを出すことを検討していることについて特集を組んだ。昨季、導入された制度はチームにとってプラスになるとされているが、使い方によってはマイナスになることもありそうだ。

 「クオリファイング・オファー」は昨オフに新設された制度だ。球団側が、その年の年俸上位125人の平均額での1年契約をFA選手に対して提示。選手は1週間以内に受け入れるかを決める必要がある。クオリファイング・オファーを拒否して他球団に移籍した場合は、前在籍球団に対して新球団からドラフト指名権が補償されるが、このオファーを受け入れなくても、引き続き前在籍球団との交渉が可能になる。

 規定額が1330万(約13億1000万円)ドルだった昨年は、メジャー全体でジョシュ・ハミルトン(当時はレンジャーズ)ら9人にクオリファイング・オファーが出されたが、全員が拒否。デビッド・オルティス(レッドソックス)、黒田博樹(ヤンキース)の2人は、引き続き前在籍球団と交渉を続け、より高い額での再契約に至った。そして、ほかの7人は他チームと契約したため、前在籍球団はドラフト指名権を補償された。

 今季の規定額は1410万ドル(約14億円)となるが、同紙によると、この制度のポイントは単年契約で済むということ。しかも、選手によるトレード拒否権も含まれないため、リスクは少ない。多くのチームが3年3000万ドルよりも1年1410万ドルの契約を好むという。さらに、クオリファイング・オファーを出すことで選手の市場価値は落ちることになる。ドラフト指名権を失いたくない他球団は、獲得に向けて二の足を踏むからだ。選手を失いたくない前在籍チームとっては、それだけでもメリットになる。

 今季のヤンキースは、グランダーソンだけでなく、ロビンソン・カノや黒田にもクオリファイング・オファーを出す可能性があるという。今季ケガに悩まされたグランダーソンがオファーを受け入れるかは微妙だが、大型契約を望むカノは確実に拒否するとされており、ヤンキースには有利に働くかもしれない。一方で、黒田は日本に復帰するとも言われており、メジャー球団からドラフト指名権を獲得できなければヤンキースにとっては何の意味もなくなる。誰に対してこの制度を使うかは、やはりポイントになりそうだ。

 他チームでは、レッドソックスのジャコビー・エルズバリー、レッズの秋信守、ロイヤルズのアービン・サンタナ、ブレーブスのブライアン・マッキャン、ジャイアンツのティム・リンスカム、レンジャーズのネルソン・クルーズらにもクオリファイング・オファーが出される可能性があるという。2年目の制度がどんなドラマを生むのか、注目だ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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