美しかった選手の引き際 桧山進次郎、小池正晃…。引退選手の最後の仕事とは?
DeNAの小池が示した家族への深い愛情
もう1人、引退間際に家族への深い愛情を示した男がいる。今季限りでユニホームを脱ぐことを決めた横浜DeNAの小池正晃外野手(33)だ。
引退試合となった10月8日の阪神戦。「こんな1、2軍を行ったり来たりする選手に引退試合を設けてもらってうれしい」と話した小池は、目を潤ませながら立った現役最後の打席でフルスイングすると、打球は左翼席に飛び込んだ。
この日の小池は大当たりで、今季1号を含む2本塁打で計3安打。格好良すぎる幕切れに横浜高校の同級生で現在、メジャーでプレーする松坂大輔が「小池、お前はそういう奴だよ。ホームラン2発って…」とツイートするなど、感動的なフィナーレとなった。
その後のセレモニーで小池は「丈夫に生んでくれた」と両親に感謝し、続けて妻と3人の子供の名を叫んだ。2軍暮らしが長かった男は家族に対する罪悪感を抱えていたのだろう。「つらい思いを今年1年させてしまい、格好悪いパパだったけど、最後の最後で格好いいパパを見せられました」と言葉を絞り出した。
そんな父は3人の子供が花束を手渡されると、大粒の涙を零した。子供たちからはずっと「辞めないで、パパ」と懇願されていたのだという。ブルーに染まるスタンドから鳴り響いた小池コールは、子供たちの胸に深く刻まれたことだろう。
今年は広島の前田智徳、ヤクルトの宮本慎也、中日の山崎武司、巨人の古城茂幸らのベテランたちが次々と引退を決めた。それぞれ、引退試合やセレモニーでは、自分の子供をその瞬間に立ち合わせている。その場で子供たちはきっと父親の偉大さを感じ、「こういう人間になりたい」と思ったはずだ。
プロの第一線で戦ってきた男にしかできない子供へのメッセージの伝え方。トップアスリートは父親としての仕事も一流だった。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count