楽天を牽引する43歳 斎藤隆が胸に秘める被災地への思いとは
運命の一戦で生まれた最高の投手リレー
まるでシナリオがあるかのようにゲームは進んだ。楽天が悲願の初優勝を決めた9月26日の西武戦。「神の子」田中将大につないだのは、地元・仙台出身の斎藤隆だった。
8回1死でジム・ハウザーが肩に異常を訴えたことによる緊急登板だったが、経験豊富な大ベテランはまったく動じる様子を見せずにマウンドへ。熊代聖人をライトフライに打ち取ると、代打の上本達之を空振り三振に仕留める。1点のリードをがっちりと守り、最終回は球団と共に成長を続けてきた田中へとバトンタッチ。運命の一戦で最高のリレーが実現し、被災地に勇気を届けるパ・リーグ初制覇の瞬間を迎えた。
「すべてに感謝したいですね。自分が生まれた場所にプロ野球チームができて、優勝が決まる試合で自分が投げられたことが、とにかくうれしいです」
入団1年目でチームを牽引してきた43歳は、しみじみと言葉を紡いだ。2年前のことを考えれば、運命に導かれたとしか思えないシーズンだった。
2011年3月11日。東日本大震災が起きた当時、斎藤はアメリカのアリゾナ州でブルワーズの一員としてオープン戦に参加していた。あまりにも衝撃的なニュースを聞きながら、仙台に住む両親や兄家族、友人らの無事を祈ることしかできなかった。家族の安否が確認できた後、兄から生活すら困難な被災地の状況をメールで聞かされても、思うように支援することもかなわなかった。