楽天を牽引する43歳 斎藤隆が胸に秘める被災地への思いとは
東北の人たちを野球で勇気づける
重要な場面で結果を出し続けた投球そのものだけでなく、投手陣を引っ張るポジティブな姿勢、若手への的確なアドバイス。それらすべてが、Bクラスに沈むことが多かったチームを躍進に導いた。事実、ブルペンで多くの時間をともに過ごした青山浩二は、豊富な経験を誇る斎藤に何度も救われたという。
「存在感がすごい。隆さんに声を掛けてもらえるだけでモチベーションが違います。違和感があったら教えてくれるし、マイナスな発言もしない。しゃべりやすく、接しやすくしてくれて、聞けば何でも教えてくれる」
その言葉には、ベテランへの絶大な信頼がにじみ出ている。
西武戦で優勝を決めた直後、斎藤はスタンドのファンに向かって何度も「おめでとう!」と叫んでいた。ただ、まだ戦いは終わっていない。クライマックスシリーズ、日本シリーズでも、43歳の力が必ず必要になる。舞台こそ変わったが、2011年には果たせなかった頂点に立つための戦いが、再び始まるのだ。
2年前、シーズンを終え、帰国の途に就く直前に斎藤は言った。
「(被災地の)現状を把握して、これから先に自分が何を出来るかを見極めたいなと思うのと、1、2年では戻らないことの方が多いと思うので、どうすればいいのか考えたいですね」
確かに、この2年間で元通りになっていないものはたくさんある。ただ、震災の前より強くなったものもある。それは楽天が放つ希望の光だ。その中心に斎藤がいる。楽天の先頭に立ち、東北の人たちを野球で勇気づけることが使命となった男。43歳のベテランはファンと共に日本一の瞬間に立ち会えた時こそ、「3・11」以来、内に秘めてきた思いに一つの区切りをつけられるに違いない。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count