「神の子」田中将大が挑む日本シリーズ 「神様」以上のインパクトを残せるか
田中将大が「神の子」と呼ばれた試合
神の子が神様を超えた試合がある。今年の8月16日だった。楽天の田中将大投手(24)はその日の西武戦に勝利し、2012年8月26日から続いていた連勝を21に伸ばした。その数字は、西鉄の稲尾和久氏らを上回り、実に56年ぶりとなるプロ野球新記録となった。つまり、「神様」超えを果たしたのである。
稲尾氏が「神様」となったのは遡ること55年前、1958年の日本シリーズだった。巨人相手にいきなり3連敗を喫した西鉄は、その後、4連勝して逆転日本一を達成。その4試合すべてで勝利投手となったのが稲尾氏だった。神がかったピッチングに、メディアは「神様、仏様、稲尾様」と称賛し、それが稲尾氏の代名詞となった。
その稲尾氏が現役時代に打ち立てた20連勝を、今季、田中は塗り替えた。その後、シーズンを24勝無敗で終え、クライマックス・シリーズもMVPの活躍で突破。その投球は稲尾氏以上に神がかっていると言えるだろう。
そんな田中を「神の子」と呼び始めたのは、かつて楽天を率いた名将・野村克也氏だった。
入団1年目となった2007年のこと。ルーキーの田中は高卒ながら、ローテーションを任され、白星を積み重ねた。迎えた8月3日のホークス戦。相手打線に直球をとらえられ、4回まで5失点と大崩れしたが、味方打線が爆発。4回に4点、5回に3点を奪って逆転し、6回まで投げた田中は5失点ながら、9勝目を挙げた。
失点しても味方打線がそれ以上に点を奪う展開に、野村監督も首をひねるしかなかった。その際、漏らしたのが「マー君は神の子だね。不思議な子だよ」というコメントだった。その後も同様の試合が続き、指揮官もその勝ち運の良さに目を丸くするばかり。それがメディアでも大きく取り上げられ、いつしか、田中には「神の子」という呼び名が定着した。今季、無敵の活躍を見せるマー君は、その頃からすでに「負けない」投手だったのだ。
その「神の子」は26日から人生初の日本シリーズに挑む。相手は巨人。来季のメジャー挑戦も噂されるエースにとって、最初で最後の日本シリーズとなる可能性も浮上する。55年前の大舞台で「神様・稲尾」が伝説を作ったように、「神の子」も球史に名を残す投球ができるだろうか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count