レッドソックスを蘇らせたオルティス“先生”のゲキ
高校野球顔負け 円陣を組んでの気合注入
主砲の「熱さ」が話題となっている。ワールドシリーズは第4戦をレッドソックスが制し、2勝2敗のタイとなった。最後は上原浩治が史上初となる牽制での試合終了を演出し、チームも再び息を吹き返した。この試合で、チームの顔であり、上原とは家族ぐるみの付き合いがあるデビッド・オルティスが熱くナインを鼓舞し続けことを、アメリカで多くのメディアが取り上げている。米全国紙USAトゥデーは、オルティスを「先生」と名付け、その活躍ぶりをたたえた。
強烈なリーダーシップを発揮したのは1点をリードされて迎えた5回だった。先頭で打席になったオルティスは、そこまで1安打に抑え込まれていた相手先発のランス・リンから右中間を破る二塁打を放った。すると、二塁ベース上からダッグアウトを指さし、自分の胸を激しくたたいた。味方を鼓舞するしぐさだった。その後、レッドソックスはステファン・ドリューの犠牲フライで同点に追いついている。
さらに、この回が終了すると、今度はダッグアウトで選手を集め、円陣のような形でゲキを飛ばした。メジャーリーグでは滅多に見られない、極めて珍しい光景だった。しかも、その内容は「挽回するチャンスが来ている。野球を楽しもう。自分たちの野球をやろう」というもの。日本の高校野球も顔負けの気合注入だった。効果は覿面で、次の回にジョニー・ゴームズの決勝3ランが飛び出し、重要な第4戦に競り勝った。
同紙はオルティスの試合後のコメントを紹介。「攻撃で何をすることも出来ず、みんなが落ち込んで、イライラしているのが分かった。だから、やる気を起こさせるために少しの言葉を思いついたんだ」としている。さらに、決勝3ランのゴームズは、オルティスについて「彼の存在感はすごい。(円陣の時は)24人の幼稚園児が先生を見ているようだったよ」と振り返った。
オルティスは、4月にボストンマラソンで爆弾テロがあった際にも、本拠地のフェンエイパークでスピーチを行い、話題となった。ボストンの街への愛情を示すために「ファッ〇ング」と放送禁止用語を連発し、喝采を浴びている。チームの象徴的存在である主砲のゲキで、レッドソックスは勢いを取り戻した。オルティス自身はワールドシリーズに入ってから打率7割2分7厘、2本塁打、5打点と驚異的な数字をたたき出している。
ちなみに、上原はオルティスと大の仲良し。家族ぐるみの付き合いで、帯同している長男の一真くんはオルティスジュニアと試合前の練習で行動を共にしている。主砲と守護神の活躍で、世界一に輝けるだろうか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count