FA濃厚の西武・涌井秀章はライバル球団へと羽ばたくのか

西武が涌井を慰留する可能性は低い

 ロッテが最有力とされる裏には、涌井は千葉県松戸市の出身であることや、西武時代に監督を務めていた伊東勤監督が指揮を執っていることなども影響している。本人からすれば、起用法も性格も熟知した指揮官ならば、自分をうまく使ってくれるという安心感もあるだろう。ただ、早くから目をつけていた阪神や横浜DeNAも、球団関係者が「まだまだできると思う。力のあるピッチャーだ」と話しており、黙ってはいないはずだ。

 一方の西武は、またもや主力選手が流出する危機にある。これまで11人の選手がこの球団からFA移籍をした。ただ、これまでの西武を見ると、FAを宣言した選手を他球団ほど強い気持ちで慰留するかといえばそうでもない。FAに限らず、力が衰えれば、功労者であっても戦力外とすることは珍しくなかった。反面、中島裕之や「おかわり君」こと中村剛也、浅村栄斗、投手で言えば菊池らがそうだったように、若い生え抜き選手がチャンスを与えられ、頭角を現す土壌がここにはある。

 過去、黄金期を支えた辻発彦、秋山幸二、渡辺久信(石毛宏典、清原和博、工藤公康はFA移籍)らも、最後は放出の色の強いトレードや戦力外になっている。FAした工藤も球団への改善要求をしたが、認められず移籍した経緯があった。

 経営や育成の方針は各球団によって異なり、チーム編成も様々な考え方がある。その中で、西武という球団は断続的な新陳代謝によって選手をやりくりしてきた。今回の涌井にしても、選手側の要望を全て呑んででも慰留する可能性は低いだろう。そう考えると、必然的に涌井の気持ちは新天地へと向くことになる。いずれにせよ、争奪戦は必至。今季、クライマックスシリーズ最終ステージを戦った宿敵・ロッテのユニホームを着て戦う日も近いかもしれない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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