3度のライトゴロ ホセ・ロペスと長野久義が頭脳で勝ち取ったゴールデン・グラブ賞
驚くべき、年間3度のライトゴロ
ゴールデン・グラブ賞が発表され、巨人から最多の4人が選出された。その中でもホセ・ロペス一塁手(29)の守備力は、チームのセ・リーグ制覇に大きく貢献した。その堅実な守備もさることながら、ロペスの緻密さは今季、3度のビッグプレーを生んでいる。「ライトゴロ」である。
ライトゴロとは、一塁ベースに近い右翼手が打者走者の到達よりも早く一塁に送球し、アウトにすること。内野ゴロとは異なり、通常ならばヒットになる打球をアウトにするため、難易度は高い。少年野球ではよくあるが、プロでは滅多に見られないプレーでもある。ライトゴロでは右翼手が評価されることは多いが、ゴールデン・グラブ賞で一塁手のロペスに票が集まったことからも分かるように、その好判断に賛辞が贈られた。
5月15日、東京ドームでのロッテ戦。2回2アウト満塁のシーンで、一塁手・ロペス、右翼手・長野久義のコンビは打者走者・グライシンガーの打球をライトゴロにしてみせた。通常ならば、得点を阻止するために本塁へ迷わず投げてしまうところだが、長野は判断よく一塁へ送球した。それができたのは、ロペスの瞬時の判断が大きく影響している。
ロペスは自分の横を打球が抜けた瞬間、打球が速かったことから「いける」と思い、すかさず一塁ベースに入った。打ったバッターが投手だったことや、一塁への返球を予期していなかったグライシンガーがゆっくりと走っていたことも、頭に入っていた。ロペスは大声で長野に声をかけ、それに気づいた長野が一塁へ送球してアウトにしたのである。
この2人は以前から頻繁にコミュニケーションを取りながら、ライトゴロを狙っていたという。バッターが投手の時、その中でも特に打撃を得意とする選手や外国人選手の場合に狙うことを確認し合っていた。というのも、打撃の良い投手はバットの芯でとらえることがうまいため、打球が速くなる反面、長打の可能性が低く、外野手が前進守備で守れるからだ。要するに、最もライトゴロを狙いやすいターゲットなのである。
9月12日の東京ドーム・横浜DeNA戦でも、同点の3回2アウト二塁でビッグプレーが飛び出した。ブランコの打球は勝ち越しのタイムリーになろうかという当たりだったが、ブランコ自身の足がそこまで速くなかったことも影響し、長野―ロペスのコンビでライトゴロに仕留めた。さらに10月2日の東京ドームのヤクルト戦でも3回1アウトから投手の松岡健一の打球をライトゴロにしている。ライトゴロはただでさえ珍しいのに、それを1シーズンで3度も成し遂げたのだから、驚異の守備力と言える。
シーズン3度のライトゴロは巨人では1943年に4度記録した中島治康氏以来、70年ぶりのこと。そのため長野の送球に注目が集まったが、その裏でロペスの頭脳プレーが光っていた。ロペスと長野は普段から仲が良く、息も合っている。その両者が同時にゴールデン・グラブ賞を受賞したのだから、喜びもひとしおだろう。同賞は選手個人の技術によって受賞することもあるが、この2人の同時受賞は類まれなコンビネーションなくしては実現しなかったに違いない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count