マー君に続く逸材 対戦打者から高評価を集める唐川侑己の凄さとは
とてつもないピッチャーになる
忘れもしない2007年のある晩のことだった。当時横浜の仁志敏久(現侍ジャパンコーチ)が発した一言。
「とんでもないピッチャーが現れた。あの選手は凄い。とてつもないピッチャーになるよ」
ダルビッシュ有でも田中将大でもない。ロッテに入団したての平成生まれ、唐川侑己(24)のことだった。変化球のキレ、スピード、腕の振り……。「今までに見たことない」と仁志は続けた。
唐川と言えば、緩急をつけて相手をかわす技巧派というイメージだが、実際に対戦した打者は「ストレート、スライダー、速い球、遅い球、全部が同じ腕の振りで出てくる。本当に打ちにくい」と話す。今後の対戦もあるので実名は控えるが、日本の中で「1番凄いと思うピッチャーの名前は?」を問うと、数名と選手が「唐川」と答えた。田中が球界を席巻した今シーズンでさえ、最も嫌な投手を挙げてもらうと「マー君」よりも「唐川」の名前の方が多かった。
13年シーズンは9勝と振るわなかったが、10年から12年の3年間で見ると唐川はわずか13本しか本塁打を打たれていない。同じ3年間で計算すると、あの田中でさえ21本の本塁打を浴びている。投球回数の違いなどがあるため一概には比較できないが、唐川の“打ちにくさ”を象徴する数字と言っていいだろう。
当時まだ対戦経験のなかった仁志も、高卒の唐川のピッチングにテレビの前で釘付けになったという。「このピッチャーは簡単に打てないよ。ヤバいのが出てきた。本当に打ちにくそう」と仁志は言った。
平成生まれのプロ野球選手として、初の勝利投手となった唐川。現状では、日本ハムの主砲で、同じく平成生まれの中田翔が話題をさらっているが、その素質が開花すれば、マー君フィーバーならぬ唐川フィーバーが起きてもおかしくない逸材と見ていいだろう。平成生まれ初のメジャーリーガーは、この中田か、あるいは唐川か。いずれにせよ、唐川という投手には底知れない魅力が秘められている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count