ダルビッシュがサイ・ヤング賞を獲るために必要な、5つのファクター

長いイニングを投げるためには?

【3】三振の減少

 渡米後、ダルビッシュの最大の魅力とされているのが、圧倒的な奪三振率だ。今季はメジャー断トツの277K。デビューからのペースは野茂英雄を上回り、あのドワイト・グッデンに続いて史上2位となっている。ただ、三振の多さが球数の多さにつながっていることも確か。より長いイニングを投げるためには、打たせて取る投球、つまり三振が少し減るくらいでもいいかもしれない。

本人も「三振はアウトを取る1つの手段でしかない」と興味を示さない。9月9日のパイレーツ戦では6Kのみで、7回に脚の異常で降板するまで81球と球数も少なかった。ただ、テンポ良くアウトを重ねる投球に「今までのキャリアの中でベストだった」と話している。圧巻の奪三振ショーがファンの心をつかんでいる一面もあり、サイ・ヤング賞の投票では評価基準の1つにもなっているが、もう少し数が減っても問題はないだろう。三振は勝負所で取れればいい。209回2/3という投球回数は十分に立派な数字だ。ただ、さらに白星を重ねるには、より少ない球数で、より長いイニングを投げられる方が理想的ではないだろうか。

【4】“一発病”の克服

 今季はとにかく一発病に苦しんだ。被本塁打26本は自己ワースト。ボールが飛びやすいレンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリンントンが本拠地だとはいえ、やや多かったと言えるだろう。8月13日のアストロズ戦では、8回1死まで無安打に抑えながら、ソロ本塁打を浴びてノーヒットノーランを逃した。さらに、8月30日のツインズ戦でも6回までノーヒットだったが、同点2ランを浴びて台無しに。この時は勝利すらつかめなかった。

 また、5月27日のダイヤモンドバックス戦では、同点の8回に同点2ランを浴びて勝利を逃している。この試合まで実に6試合連続被弾。この時に象徴されるように、シーズン序盤は勝負所でカットボールを打たれることが多かった。本人は「結局、投げたのはあの球ですし、僕は信じて投げている球なので、それでよかったと思います」と話したが、狙われていたことは明らか。ただ、後半戦は直球主体の配球に変えたこともあり、同じような失敗は減った。相手を研究する努力、その結果を踏まえてピッチングを組み立てる頭脳は右腕の最大の長所でもあるだけに、来年は克服してくるだろう。

【5】打線の援護

 こればかりは本人にはどうしようもないが、トレードで加入したプリンス・フィルダーの加入は間違いなくプラスに働くだろう。今季、0―1での敗戦は4度。これは89年のオーレル・ハーシュハイザー以来という不運で、シーズンを通しての援護率もサイ・ヤング賞に輝いたシャーザーの7・52に対してダルビッシュは4・68と大きな差があった。防御率では0・07上回っていただけに、援護が多ければ、勝利数に8勝もの差はつかなかっただろう。それだけに、3年連続100打点を誇るフィルダーの加入は心強い。今季はシャーザーを強力に援護していた男が、今度はダルビッシュの仲間になるのだ。期待は高まる。

 ダルビッシュが力を発揮すれば、間違いなくサイ・ヤング賞は手に入る。そして、世界一も見えてくる。そのために何が必要か。研究熱心な男はすでにプランを立て、目標に向かい始めているだろう。どれだけ進化した姿を見せてくるのか、来季の活躍が楽しみでならない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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