ぺラルタの大型契約を疑問視する声も メジャーから薬物は排除されるのか?
選手が禁止薬物に手を出してしまう理由
なぜ、選手は禁止薬物に手を出すのか。ペラルタとともに出場停止処分を受けたレンジャーズのネルソン・クルーズは、2011年オフに崩した体調を戻すために使用したという。その事実を認めた上で「間違った判断だった。言い訳は出来ない」と涙ながらに謝罪している。また、2009年に過去3年間の薬物使用を認め、謝罪会見を行ったAロッドは「劇的に力を向上させるという話だったので、使用した。無知で若く、愚かだった」と話した。当時は、大型契約が重圧になっていたことも理由の1つとして挙げている。様々な重圧から逃れるため、甘いささやきに気持ちが傾いてしまった選手もいるということだろう。ただ、過ちを繰り返すAロッドを見ると、罰則が十分ではないとする指摘も理解できる。
大リーグ機構(MLB)を批判する声も後を絶たない。そもそも、禁止薬物が蔓延したのは、MLBの責任が大きいとされているからだ。メジャーでは、ステロイドが禁止薬物と認定された1991年から2004年までの間、罰則規定は設けられなかった。初めてドーピング検査が行われたのは03年。これも実態調査のためで、規定が作られるまではさらに時間を要している。この間、MLBはビジネス優先の改革を続けるばかりで、薬物問題については見て見ぬフリを続けた。結果として、バリー・ボンズ、ロジャー・クレメンスらのスーパースターも薬物にまみれていった。
現在、211試合の出場停止を不服としてMLBに異議申し立てを行ったAロッドの調停委が行われており、米メディアを賑わせている。ニューヨークのMLB本部前には連日、Aロッドの熱狂的なファンが集結。そこでは「薬物を蔓延させたのは(コミッショナーの)バド・セリグの責任だ」とするプラカードも見られる。20日には、聴聞会でセリグ氏の証言が必要ないとする仲裁人のフレデリック・ソロウィッツ氏の判断にAロッドが激怒し、退席するという場面もあったが、ファンの指摘も決して的外れだとは言えないだろう。
ペラルタの大型契約で、メジャーの薬物排除の動きにブレーキはかかってしまうのか。同じように8月に出場停止処分を受けた選手の中には、まだレンジャーズに所属していたネルソン・クルーズら大物のFA選手がいる。クルーズは4年7500万ドル(約76億6000万円)程度の契約を望んでいるとの報道もあり、同じような流れが続くことが危惧される。仮にそうなれば、カージナルスの責任は重い。罰則規定の変更を望む声がさらに高まるのは確実なだけに、MLBの対応が注目される。
さらに、Aロッドの調停で出る結果も、今後の流れを決めることになる。出場停止処分が211試合から大幅に減刑されることになれば、批判が巻き起こることは確実。MLBがメンツを潰されれば、改革に乗り出すのだろうか。一連の薬物問題は、MLB、そしてセリグ氏の本気度をうかがう絶好の機会と言えるかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count