ベイスターズが11年ぶりの投手FA補強 果たして過去の教訓を生かせるか

中畑監督が期待を掛ける久保の獲得

 中畑清・横浜DeNA監督のラブコールが届いたのか。指揮官が「待ってるよ。早く結論を出してほしいね」と熱心に勧誘していた阪神・久保康友投手(33)の入団が決まった。FAを宣言していた同投手について、高田繁GMも「先発の柱となって、引っ張っていってほしい」とエース・三浦大輔(39)に次ぐ先発右腕として期待を寄せた。

 今季のチーム防御率は4・50と12球団ワースト。1年間ローテを守ったのも三浦ただ一人だった。久保に対しては、若い井納翔一(27)や三嶋一輝(23)の指導役としても期待がかかる。中畑監督は「2ケタ期待できる」とホクホク顔だった。

 思い起こせば、ベイスターズが投手をFA補強するのは11年ぶりのことだ。11年前の2003年に誰を補強したか、記憶にあるだろうか。

 その名は若田部健一投手。ダイエーから加入した同投手は当時33歳。まさに今回の久保と同い年のタイミングでFA移籍をしてきた。

 その前年に10勝するなどダイエー時代は4度の2ケタ勝利で70勝。実績は十分だった。当時、横浜ベイスターズを率いた山下大輔監督は先発の軸として迎え入れた。鎌倉学園高校出身であり、甘いマスクの地元選手の獲得は、球団にとっても願ってもないことだった。

 しかし、2003年シーズンは開幕から精彩を欠いた。セ・リーグの球団相手にまったく勝負にならず、KO負けが続いた。4月下旬には発熱で緊急入院。一時は復帰するも、5月末にまたも発熱で離脱した。若田部のみならず、斎藤や吉見といった開幕ローテ投手が2軍落ちするなど、先発投手陣は惨憺たる成績だった。

 その後も本来の力を発揮できず、シーズン終了後には右肘の手術を受けることになり、リハビリ生活へ。2004年の8月にリリーフで1勝したのみで、2005年は1試合も1軍に登板しないまま、戦力外となった。当時、若田部がFAで結んだのは3年契約。結果だけを見れば、その大型契約の期待に添えなかったと言える。

 これは外国人によくあてはまることではあるが、複数年の大型契約は選手に甘えが生まれることがある。1年間、成績を残せなくても次の年にがんばればいいという思考に陥りやすいのである。残りの年数を考えて手術に踏み切り、1年間、働かずに給料をもらうケースも。若田部がそうだったとは言わない。同投手の場合は体調不良や怪我に泣かされた面が大きく、むしろ不運な形だった。ただ、ベイスターズに限らず、そのような経験を積み重ねてきた球団側にとって、新たな戦力を迎え入れる際の契約は大きな課題と言える。

 高卒の選手が最初にFA権を取得するのは油の乗り切った時期。一方、大学や社会人から入団した選手は、年齢的に野球人生の岐路に差し掛かる時期だ。これから伸びしろがあるのか、下降線を辿るのか、その見極めも極めて重要になる。もちろん、選手の努力次第という側面もあるが、現在の力をどこまで正確に見抜くことができるのか。

 久保に関してはどうか。11年前とは親会社やフロントも一新されているが、ベイスターズは若田部獲得の経験を踏まえて、条件提示をできるのか。それが複数年の大型契約でも、フロントがしっかりと見極めた上での結果ならば、何も問題はない。それらの契約の一つ一つが、チームの命運のカギを握っていくだろう。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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