ノムさんも認めた「努力の天才」鉄平 トレードで復活なるか
野村克也「鉄平は努力の天才や」
復活のキッカケになるだろうか。楽天の鉄平外野手(30)が、後藤光尊内野手(35)との交換トレードでオリックスに移籍することが発表された。2009年には首位打者に輝く活躍で楽天を初のクライマックスシリーズに導いたが、今季は不調をきわめ、わすか54試合の出場に終わった。ただ、2006年に中日から移籍し、楽天とともに成長してきた男の人気は絶大で、「チームの顔」とも表現されてきた。楽天ファンはショックを受けているはずだが、同時に、愛情を注いだ選手が新天地で本来の姿を取り戻すことを心から願っているに違いない。
外角のボールを鮮やかに流し打ち、内角の厳しいボールは巧みなバットさばきで右方向に運ぶ。芸術的なバッティングから、鉄平は「天才」と呼ばれてきた。ただ、この表現は本質を捉えていない。その打撃を支えているのは、努力以外の何ものでもないからだ。
首位打者に輝いた2009年、鉄平は神がかっていた。体からはオーラすら発し、どんなボールでもヒットにしてしまう。天狗になってもおかしくない状態だったが、シーズン中にバットを振らない日はなかった。全体練習が休みの日は、中堅クラスの選手は参加を免除されることがほとんどだったが、必ず球場に姿を現し、打ち込んだ。投手陣だけの練習の日でも、1人で室内練習場にこもり、バットを振った。
疲労がピークの中でクライマックスシリーズを迎えても、その姿勢は変わらなかった。ソフトバンクとの第1ステージを制した直後、楽天には1日だけのオフがあったが、鉄平だけは練習場に現れている。「疲れはあるけど、体を動かしておきたい」。これが日常だったのだ。その姿を見ていた野村克也監督(当時)は「鉄平は本当にバッティングが好きだな。あいつには365日休みがない。やればいいってものじゃないけど、姿勢が大事だよ」とうれしそうに話し、「鉄平は努力の天才や」と褒めたたえている。