今季のトレードに見る勝ち組だった選手はだれ?
青木にとってプロ7年目での初優勝
青木は県立岐阜商業から愛知大を経て日産自動車へ入社。2006年のドラフト会議で広島カープに4位指名され、入団した。そこでは先発も中継ぎも経験。結果が思うように出なかったため、当時の大野豊コーチに投げ方をサイドにすることを勧められて成功を収めた。今年32歳を迎えた左投手である。
開幕したばかりの今年4月末、巨人は左腕・高木康成の左肩の怪我で1軍レベルの左投手が不足する事態に陥った。その際、白羽の矢が立ったのが昨年1試合も登板のなかった青木だった。
広島時代の2012年に左膝関節前十字靱帯および左膝半月板の修復手術をして以降、青木は長らくリハビリの生活を送っていた。毎日、2軍の球場で地味なトレーニングを継続。再起は難しいとされていたが、懸命にリハビリを続けた結果、順調に回復し、2013年度中の復帰の道が見え始めた。その時にやってきたのが突然のトレードだった。
それでも1度、怪我から復帰した男は強かった。春先に急遽、1軍に抜擢されることになっても「野球をやれる喜びを感じています」と前向きに話し、2年ぶりの公式戦登板から相手打線を抑えた。独特なフォーム、サイドスローから繰り出すボールで今季は5勝1敗とチームに貢献した。広島から移籍してきた青木にとってはプロ7年目での初優勝だった。
来年は、親交の深かった大竹寛が同じく広島から巨人に入団することが決まった。FA右腕にとっても、1年先に巨人でプレーしている先輩は心強い存在に違いない。不安なことがあれば、全部、青木に聞けばいい。大竹がFAで巨人に飛び込んでいけた一つの要因でもあっただろう。その点においても、前年度の青木の加入は、今季の戦いだけでなく、先を見据えた大きな「補強」となったようだ。
トレードは、必要とされる選手であるから成立する。その意味では決して悪いことではなく、むしろ、苦労をした選手が移籍先で才能を開花させていく姿には、見ている側も心が晴れるような気持ちにさせられる。今年もオリックス・後藤光尊、楽天・鉄平の電撃トレードが発表になるなど、活発な動きが出ている。双方に意義のあるトレードになれば、球界全体も活性化していくことだろう。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count