プロ野球と高校球児の架け橋 「夢の向こうに」の意義とは
野球界のさらなる発展のために
最近までこのシンポジウムはグラウンドではなく、屋内での交流が主だったが、この時は球場全体を使っての技術指導が行われた。イベントはまず投手、野手に分かれて、実技指導がスタート。投手はブルペンで一人ずつピッチングをして、その後ろに現役選手が立ってアドバイスを送った。参加したロッテの唐川侑己は「なかなかいい球を投げる子がいて驚きました」と感想を漏らした。
一方、野手では捕手、内、外野に分かれて、守備練習を実施。捕球や打球の追い方など、生徒たちの質問を受けながらプロが指導した。その後、打撃と走塁部門に分かれ、打撃練習ではロングティーで選手がトスを上げて、10球前後打ったところで球児が交代。その後、生徒は選手からのアドバイスを受け、一番、力を入れるミートポイントはどこかなどを教わった。また、走塁では一塁ベースからのスタートや帰塁などの練習を実施。牽制の時に一番、最短距離で戻る方法や、最もスピードが発揮できるスタートの切り方などを指導され、球児たちの視線は選手にくぎ付けになった。
最後は全員が集合して、質問コーナーと閉会式が行われた。捕手をしている選手からプロ選手に対し、「どのような捕手が一番、嫌な捕手だと感じますか?」などの質問が飛び、生徒たちはプロの知識を取り入れようと必死だった。そのほか、体を大きくするためにはどうすればいいかなどの質問も出て、プロ選手から貴重な答えを聞いた生徒たちは充実した表情を浮かべていた。
この「夢の向こうに」というシンポジウムが始まったのは2003年のこと。実は技術や考え方を教えたいというプロ選手はたくさん存在する。選手たちの多くが、野球に恩返しをしたいと常に思っているからだ。自分が育った少年野球チームや高校、大学、社会人チーム、あるいは、出身の都道府県に対して。自分の母校が甲子園に出場すれば学校へ差し入れもする。大会が始まれば、結果が気になって仕方がない選手も多い。また、プロになる選手は向上心が強く、高校時代にもっと考えて練習すればよかったと思っている者も数多くいる。だからこそ、その経験を踏まえて、子供たちに教えてあげたいという思いも秘めている。
そんなプロ野球選手の体験談や培った技術の話は、生徒たちの心をつかんで離さない。聞き手の意識が高いということは、伸びる要素でもある。つまり、若い球児たちの技術を遥かに向上させる力が、この活動にはある。今後もこのシンポジウムは続いていく予定で、参加の権利のある球児たちが積極的に出席し、恥ずかしからずに選手たちに質問をぶつけていくことが、何より大切だ。それらは、きっと野球界のさらなる発展につながっていくことだろう。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count