なぜマー君に多額の資金を投入できる? MLB球団の浮世離れした収入源とは

フィリーズが結んだ大型放映権契約

 先日、フィリーズがコムキャスト・スポーツネット(Comcast SportsNet)と新たなテレビ放映権契約を結んだと発表した。現在の契約は2015シーズンをもって終了。2016シーズンから、25年間25億ドル(約2625億円)という大型契約がスタートする。現行の契約では、放映権料は年間3500万ドルだが、新契約では年平均1億ドルまでアップする予定だ。

 フィリーズの場合、今回の契約で得る放映権料のうち、約34パーセントをMLBに上納しなければならない。それでも、今回の契約にはテレビ局の株式を25パーセント保有すること、そしてテレビ局がフィリーズ戦放送で得た広告収入の一部をチームに還元するという条項が盛り込まれているため、実質は30億ドル以上の価値があると試算されている。となれば、よほどの大博打を打たない限り、2040年まで、ある程度の余裕を持ちながら、戦力を組み立てていくことができる。

 往時のヤンキースを思わせる勢いで、一昨年からドジャースが選手獲得のため、湯水のように資金を投入するようになったのもまた、テレビ局と大型契約を結んだからだ。こちらは、FOXとタイムワーナーが放映権獲得争いを繰り広げた結果、25年約85億ドル(約8925億円)という浮き世離れした契約が誕生した。2013シーズンから始まった契約では、年間約3.4億ドルの放映料が球団に支払われることになっている。総額1億ドルを超えると予想される楽天・田中将大の契約先としてドジャースが有力視される理由が、この資金力に由来する部分も大きいだろう。

 その他、今オフは思い切った資金投入が目立つマリナーズも、2013シーズンからテレビ局との新契約が始まり、年間約1億1500万ドルの放映権が得られるようになった。ここ数年にわたって積極的な補強が目立つレンジャーズ、エンゼルスも、それぞれ放映権料で年間1.5億ドルを得ており、今やテレビ放映権料なしに球団経営は成り立たない状況となっている。

 現在、2014シーズン終了後に一部テレビ放映権契約が切れるカブスと、2015シーズン終了後に契約終了となるダイヤモンドバックスが、新たな契約を目指して交渉中だという。この2チームがどんな放映権契約を結ぶのか、そしてその金額が今後のチーム経営にどれだけ大きなインパクトを与えるのか、注意してみると面白いだろう。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY