MLBを揺るがした禁止薬物問題 薬物提供者の呆れた主張「見つからないドーピング方法はある」
検査で見つからないドーピング方法がある
「フェアプレーだって? 考えてみてくれ。自分がアレックス(ロドリゲス)になって、打席に立ったとしよう。マウンド上から時速95マイルの球を投げてくる奴がドーピングをしている。キャッチャーも禁止薬物を使っている。守備でも、三塁ベースにスライディングしてくる奴が薬を使っている。フェアプレーだって? みんながドーピングしているなら、自分がドーピングしてもフェアだろ?」
医師免許も持たずにクリニックを開業していたボッシュ氏の信頼性に関しては、早い段階から疑問が投げかけられているが、ルールに違反することを悪いとも思わず、どうやって法の目をかいくぐるか、そして「自分なら容易くできる」と言い切る姿が非常に印象的だった。実際、このバイオジェネシス問題は、ボッシュ氏と揉めた元従業員が、内部文書をマイアミ・ニュー・タイムス紙に持ち込まなければ発覚しなかった。つまり、ボッシュ氏の言うとおり、検査で見つからないドーピング方法がある、ということだ。
今季限りでMLBコミッショナーを引退するとしているバド・セリグ氏は、野球界からのドーピング根絶を訴えている。おそらく、このバイオジェネシス問題とA・ロッド騒動は氷山の一角に過ぎないだろう。残り1年の任期の中で、ドーピング問題にどう立ち向かい、後任にどう受け継いでいくのか。セリグ氏にとって、今まで以上に忙しい1年になりそうだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato