藤浪晋太郎と大谷翔平が挑む2年目の壁　果たしてスーパースターの原石は輝けるか

大谷はピッチャーに専念すべき

　松本氏が例に出すのは田中将大投手だ。田中も楽天の入団1年目は体の線が細かったが、2年目以降に厚みを増していった。その直後は力に頼るようなピッチングになった時期もあったが、体の変化に合わせて自分なりのベストな投球を作り上げることに成功。松本氏は、その裏には元チームメイトの岩隈久志を見て投球術を学んだことも大きいと見ている。では、藤浪の場合はどうか。

「藤浪がすごいと思うのは、最初から強気にバンバンいくわけじゃなくて、変化球をうまく使って、打たせてとるピッチングができているところ。今後もそれを続けていければいいなと思いますけど、体の線が変わっていった時にそういう投球スタイルにできるかどうか。もしくは、あのままの線でいくのか。ただ、岩隈があのままの体の線でいって、結局、肘、肩を痛めたというのもある。怪我をしないようにどういう形で彼が体を作っていくのかというのも今後の楽しみですね」

　松本氏はそう言って藤浪の進化に期待する。では、大谷に対する印象はどうだろうか。同氏は大谷に対しては方向性の転換が必要との見方を示した。つまり、「二刀流」からの脱却だ。

「一言で言うと、もったいない。ピッチャーに専念すべきだと思います。160キロ投げるピッチャーはそうは出てこない。それを常時出るようにしてもらいたいと思うんですよね。1年目は入団の経緯もあるため、二刀流を続けたのはよかったと思う。ただ、問題は今後。どの解説陣も言うと思うけど、今のままなら中途半端だと思います」

　松本氏がそう指摘する理由は、主に練習量と怪我の問題にある。

「投手も野手も両方やるということは、体力的なことも含めて、通常の倍どころか4倍くらい練習をやらないといけない。それとバットを振った時にもし変な形になったら肩を痛めますよ。これも怖い。スライディングで手をつくときもありますからね。それを考えると早く二刀流をやめてピッチャーに専念してもらいたいですね。彼は一流になれる器です。両方ともやって投手として10何勝して、打者としても3割以上を打って首位打者を狙えるバッターになれれば、これまた違うとは思いますけど、果たしてそれが可能かどうか。一番は早く本人が気づくことが大事だと思います」

　松本氏がピッチャーを推す理由はその球速もさることながら、過去の事例と照らし合わせてのことだ。投手から打者に転向して一流にまで成長したケースはあるが、その逆は皆無。つまり、投打両面で偉大な記録を残せる可能性を秘めているとしたら、まず投手をやってほしいというのが松本氏の提言である。

　1年目に順調な一歩を記した藤浪と大谷が2年目のシーズンをどう戦っていくのか。歴史に名を刻める逸材だけに、それぞれの課題を乗り越えて、順調に成長することを期待したい。

【了】

フルカウント編集部●文　text by Full-Count