後を絶たない珍事 新外国人選手が来日時に起こりやすいハプニングとは
取材に対応したのはまさかの別人?
当時、ヤクルトに所属していたカナダ出身のトッド・ベッツ内野手が来日。球団がロベルト・ペタジーニの後継者として獲得した外国人選手だった。イメージは体の大きな白人選手。ただ、担当の球団職員も、待ち受けたマスコミの記者たちも、はっきりと顔が分からなかった。そんな時に、なんとなく似ている男が空港の到着ゲートから出てきたため、確認を取った。その男は「そうそう。俺がベッツだ」と認めたため、安心して挨拶と取材が始まった。
カメラマンはお決まりのパターンで撮影を始め、ヤクルトの帽子をかぶらせて、笑顔とポーズを要望。球団マスコットのぬいぐるみにもハグやキスを何度もし、チーム愛を強調した。明るく、何でも要求に応えてくれるサービスぶりだった。だが、その様子を見ていた球団職員は何か心に引っ掛かるものがあったという。
「別人じゃないかな……」。もう1度、念のため、確認すると、さっきとは別の名前を言いだした。彼の名はエリクソン。ただのノリのいい外国人だった。
球団職員がベッツと電話で話をした時は、もっと物静かで真面目な印象で、ノリノリでカメラマンのリクエストに応えるようなタイプではないと感じていた。その直感が最終的に偽者と見抜いたわけだが、一体、当の本人はどこにいったのか? 気が付くと、野球道具を持った一人のカナダ人が、偽者が持てはやされる一部始終を近くで見ていた。それが本物だった。ベッツは、同じヤクルトに入る選手がいるのか、という風に傍観していたのだ。
本物の取材の間に偽者は逃亡。結局は、ただのいたずらだった。ベッツは2003年の1年限りでヤクルトを退団したが、その衝撃的な出来事は今でもヤクルトの関係者の記憶に刻まれている。あれから11年経った今も、何かしらの話題が持ち上がる助っ人の来日時の珍事は、キャンプ開始直前の時期の“風物詩”と言ってもいいかもしれない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count