悲運のエース 斉藤和巳が残したもの

高い目標、意識を持つことの重要性

 06年は斉藤にとっても、ホークスファンにとっても忘れられない年となった。プレーオフの第2戦だった。日本ハム相手に1敗を喫した後、ホークスはエースに託したが、0-1で惜敗。先発した斉藤は人目もはばからず、マウンドで涙を流した。自分の数字ではなく「優勝をする」、「日本一になる」という目標に全力を投じ、敗れた。一人でベンチに歩いて帰ることができず、悲運のエースとして大々的に報じられた。

 チームは負けた。だが、その姿は、和田毅、杉内俊哉ら次世代の投手たちのハートに刻まれていた。負けたくないという気持ちが伝わった。あれが真のエースなんだと。

 魂を込めて投げ、高い目標、意識を持つことの重要性をマウンドで体現した。斉藤無き後のホークスは11年に日本一になったが、斉藤は主力選手の一人一人に、メールや直接、激励の言葉をかけていた。ナインは元エースのために、一丸となって戦った。あの時の頂点は全員で勝ち取ったものだった。

 再びチームの戦力になるという目標を持って斉藤はリハビリを続けてきたが、その願いはかなわなかった。目標が実現できないと悟った時、斉藤はユニホームを脱ぐ決意をした。

 目標はさらに自分を高めてくれる。考え方ひとつで、結果は変わる。斉藤がホークスに残したものは大きかった。球界屈指の大エースは、野球への恩返しをどうできるかを考え、次なる目標を探す旅に出かけた。きっとまた、ファンが、選手が引き込まれるようなことをやってくれることだろう。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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