メジャー生き残りへ カブス・和田毅が脱「いい人」宣言
もう少し早く休ませてくれって言えばよかった
2012年に受けたトミー・ジョン手術こと左肘靱帯再建手術の話をしている時だった。その年、オリオールズと2年契約を結んだばかり。先発ローテの一角を担う貴重な戦力として入団したが、フロリダ州サラソタでキャンプインした当初から多少様子はおかしかった。
和田の投球を映像で見たことはあっても、実際に自分の目で見るのは初めて。さらに、パワーで押すタイプではなく、技巧派だというイメージが強かったため、時速90マイル(約145キロ)にようやく届く速球を見ても、「実際はこのくらいに見えるものなのかもしれない」と思い込んでいた。
が、改めて、当時のことを尋ねてみると「肘に張りは感じていたんですよね」と言う。投手なら、肘に張りを感じるのは珍しいことではない。和田自身「そのうち張りは消えるだろう」と高をくくっていたが、この時だけは話が違った。肘の張りが引くことはなかった。
それでも、オリオールズに入団したばかりで、キャンプインして何日も経っていない。2年815万ドルという評価を受けているだけに、なんとかその期待に応えたい気持ちが強かった。
「もう少し早く休ませてくれって言えばよかったんですけど。やっぱりあの時は言える状況にはなかったですよね」
「いい人」が共通して持つ大きな責任感が、この時ばかりは邪魔をした。結局、同年5月にトミー・ジョン手術を受けることになり、翌年まで続く長いリハビリ生活に突入。オリオールズ傘下3Aノーフォークでメジャー昇格を目指しながら調整の日々を送ったが、チーム事情もあり、デビューを果たせないままに自由契約となり、今季はカブスで心機一転の再起を図ることになった。