メジャー生き残りへ　カブス・和田毅が脱「いい人」宣言

開幕メジャーを目指す戦いは続く

　だが、手術を受けたのは悪いことばかりでもない。靱帯を移植したことで、肘は健康な状態に再生した。健康な肘で野球をできる現状を聞かれると、素直に「うれしいですね」と笑顔で答えた。

「周りに気を遣ったり、自分の意見をはっきり言わなかったりすると、最終的には自分が損をすることになる。特に、アメリカではそうですよね。少しでも違和感を感じたら休むこと。言いたいことは、はっきり伝えること。そんなことを学びました」

　実際、この春の和田は明るい表情が目立つ。野球であれ、生活であれ、アメリカという環境に慣れたことも大きいだろうが、自分の中で「やれる」という確かな手応えを感じているのだろう。招待選手という立場上、開幕メジャーは与えられるのではなく、勝ち取らなければならない。キャンプイン前にはブルペンにも約10回入り、スタートダッシュをする準備をした。

「キャンプで悠長にノンビリと（肩を）作るという立場でもない。どんどんアピールして、使ってもらえるような選手、使えると思ってもらえるような選手にならないと。こっちからアピールしていきたいと思います」

　現在は、先発ローテーション5番手を巡る競争の真っ只中。オープン戦のマウンドに立った時はもちろん普段の練習中まで、一旦ユニホームに袖を通したら「いい人」の側面はロッカールームに取り置いておく。前面に押し出すのは、少し我の強い勝負師の顔。先発ローテ&開幕メジャーを目指す戦いは、まだまだ続く。

【了】

佐藤直子●文　text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける｡2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」（ともにエンターブレイン）などがある。