高校野球シーズンがいよいよ幕開け なぜ高校球児たちは冬場に練習試合ができないのか

冬季に試合ができない幾つかの理由

 第86回のセンバツ高校野球開幕まで約2週間となった。寒い冬の間、球児たちは自軍のグラウンドで実戦形式の練習や、ウエートトレーニングなどを行い、この期間を乗り越えてきた。この時期は、対外試合は行われない。なぜなら高校野球は12月1日から3月7日までは練習試合ができない規定になっているからだ。

 それにはいくつかの理由がある。北海道や東北、北陸などでは積雪や気温が低いことも多く、他の地域よりもグラウンド状態が悪い。雪のない地域では実戦ができるが、できない地域も多い。それによって実力差が出てしまう可能性もあるため、寒冷地との格差という観点から統一して練習試合ができないようにしたのである。

 また、このオフシーズン、気温が低ければ選手の怪我につながることが多い。体が温まっていないまま、試合の場で緊張状態から大きな力を働かすと、怪我もしやすい。そのような観点からも暖かくなるまでは、試合はさせないという配慮がある。さらに試合が解禁になっても、センバツ高校野球に出場するチーム同士の試合はできないことになっている。

強豪校は3月8日に向けて逆算して調整

 センバツに出場するチームは、3月8日から大会開幕の同21日まで急ピッチで試合感覚を磨いていかなくてはならない。そのため、強豪校は秋季大会の結果を受けた時点で、3・8に向けた調整を逆算している。「センバツの出場が発表されてからでは遅い。自分たちは出場するんだという強い気持ちを持って準備をしています」と説明する指導者もいる。

 前述した怪我の防止のため、冬は基礎トレーニングを充実させるが、センバツ出場を意識しながら練習する場合は、例年よりも打撃練習の開始の時期や、投手の本格的なブルペン投球の時期を早めたりする。一方で怪我を抱える主力に対しては治療を最優先させ、練習量を落とさせるなど、試合のできない3か月間の「戦略」を練ることは練習試合と同じくらい大事なのだ。

 今年のセンバツ大会は、田中将大投手(ヤンキース)が在籍した2005年以来の出場となる駒大苫小牧(北海道)、八戸学院光星(青森)、エースで主軸のプロ注目、飯塚悟史のいる日本文理(新潟)など、雪や寒さに負けずに上位を狙う強豪が出場してくる。今の時代、ハンデをハンデととらえずに、逆境を力に変えて、チーム力を上げている。今大会はどんなドラマが待っているのか。球児たちの躍動から目が離せない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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