『新ルール』で野球が変わる? 2014年にMLBが迎える転換期と、それを巡る是非の声

新ルール採用について賛否が分かれる

 この新ルール採用に熱心に取り組んだのが、現役時代は捕手だった元ヤンキース監督のジョー・トーリ氏だ。現在、メジャーリーグ機構でベースボール・オペレーション部門の最高責任者とも言える地位にある同氏は、自らの経験をもとに、選手の安全を第一に考えてルール採用推進に尽力した。

 そして、このルール採用に対し、声高に賛成の意を表したのが、カージナルスのマイク・マシーニー監督だ。同じく現役時代を捕手として過ごしたマシーニー監督は、脳震とうの影響で13年にわたる現役生活にピリオドを打った。

 脳震とうの原因は、ホームプレート上での接触プレーではなく、何度もファウルボールを頭部に受けたことにあるが、それでも「脳震とうを受けた後、日常生活に及ぼした影響は計り知れないものだった。頭がスッキリせずにモヤが掛かった感じ。とても気分がいいものとは言えない状態だった」と振り返る。

 選手が怪我をする状況は、誰も望むものではないし、選手の安全が確保されるようなルール作りに異議を唱える人はいない。だが、安全性を重視するあまりに、本来の「野球」というスポーツのあり方が変わらないか懸念する声は多い。稀代の捕手として一時代を築いた“パッジ”ことイバン・ロドリゲス氏もその1人だ。

「もちろん、選手の安全性を考えることは間違っていない。故意の接触を防ぐ意味では、新ルールの採用は歓迎だ。でも、何としてもホームプレートを守るという捕手の意思と、何としてもプレートに触れて得点しようという走者の意思は変わらないし、変えようがない。

 走者がホームに達するまでに、捕手がボールを捕球できるか否か。それを見極められるのは、ほんの一瞬の出来事。よほど返球が遅れない限りは、わざわざ道を譲るようなことはしないだろう。野球というスポーツの魅力は、わずか1点を巡る激しい攻防にあると思う。新ルールを採用することで、その激しさが失われないことを願いたい。

 ビデオ判定の拡大も含め、今年は大きな転換期になる。もし今季が終了した時点で、新ルールが野球そのものを変えてしまうようであれば、もう一度考え直す必要があるだろう」

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