27年ぶりの選抜出場で劇的な初戦突破 池田高校をつなぐ絆のボール

チームが一つになった瞬間

 ある日のことだった。食堂で「ごちそうさまでした」と全員が声をそろえ、夕食を終えようとしたとき、池田高校の三宅駿主将がナインを整列させ、マネージャーたちの前に
立った。

「作ってくれて本当にありがとう。一緒にこれからも戦おう」

 そう感謝の思いを伝えた。その瞬間、土井マネージャーはチームが一つになったと感じた。

「去年、主力の先輩たちがいなくなって、このチームはスタートダッシュに失敗しました。でも、今はうるさいくらい元気で、まとまりがあるチーム。絶対に勝てると信じていました」と笑う。

 次は大会7日目の第1試合で、優勝候補の日本文理(新潟)を破り、好投手の田中空良(そら)を擁する愛知の豊川高校と対戦する。

 土井さんは本当は池田高校の野球部に入部し、女子選手としてプレーしたかった。だが、危険が伴うこともあり、家族から同意を得られず、マネージャーの道へと進んだ。

 今は後悔していない。甲子園に連れてきてくれたナインに感謝。硬式ボールは握れなかったが、フェルトで作られたどのチームにも負けない絆の証しを握りしめ、甲子園の夢物語を見守り続けていく。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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