松坂大輔を除く日本人5選手がマイナーへ 招待選手からメジャー切符をつかむのはなぜこれほど困難なのか
開幕ロースターの座を掴む難しさ
開幕メジャーを目指す立場の選手にとって、失敗によるマイナス点は、好プレーによるプラス点に比べ、倍以上の大きな意味を持つようになってしまう。一つのミスを取り戻すためには、二つ、三つと好プレーを続出させなければ、首脳陣らの印象は変わらない。生き残りを懸けた戦いは容易くはない。
メッツ松坂の場合を説明しておこう。マイナー契約を結んで招待選手としてキャンプに参加した過程までは一緒だ。だが、2012年に締結された新労使交渉により、6シーズン以上のメジャー経験を持ってFAとなった選手、もしくは日本、韓国、キューバなどで5年以上の1軍経験を持ち、23歳を過ぎてからメジャー球団と契約をしたがFAとなっている選手に適用される特別ルールが決められた。
前述のFA選手が招待選手としてキャンプに参加した場合、開幕日の5日前までに自由契約になるか、開幕ロースター入りが決まらなければ、球団は10万ドルを支払って保有権を買い上げなければならない。先発ローテ入りを争っている松坂はこの例にあたり、開幕直前まで先発ローテ争いが続行されることになった。つまり、球団に「お金を支払ってまでも最後まで様子を見たい」と思わせることに成功したわけだ。
これまで、日本人選手では、斎藤隆(現・楽天)がドジャースで、高橋尚成(現・DeNA)がメッツとカブスで、招待選手としてキャンプに参加しながら、開幕ロースターの座を勝ち取った。斎藤はそこからオールスターにも出場し、プレーオフには5度勝ち進んでいる。高橋もメッツでは10勝を挙げる活躍をし、日本に戻った今季は、DeNAで先発ロースター入りを果たした。投手と野手などポジションの違いもあるが、改めて2人の凄さを感じずにはいられない。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。