ヤンキースに漂う田中将大への信頼感 首脳陣も驚く日本人右腕の適応力とは?
ジラルディ監督「彼はこっちのやり方に柔軟に適応した」
日本で実績を残した選手が新たなやり方を取り入れることには勇気が必要だ。過去には、日本人投手がメジャー流の調整法を消化できず、結果を残せずに米国を去るというケースも多かった。
特に、投げ込みが重視される日本とは違い、メジャーでは「肩は消耗品」として球数が制限される。それでも投げ込みをしようとして監督やコーチとの間に溝が生まれてしまえば、米国でのやり方を否定しているとも取られかねない。お互いの信頼関係が揺らいでしまう可能性もあるのだ。
だが田中は、昨季、楽天で24勝無敗、防御率1・27という伝説的な成績を残したにもかかわらず、そのような心配とは無縁だった。キャンプ当初から与えられた練習の中でいかにうまく調整し、自分の力を発揮できるかを考えた。
米国では、ブルペンに入る日でも1日に投げる球数は30球程度。キャンプ中には100球を超えることもある日本と比べて、明らかに少ない。元々、田中の投げ込みに対する考え方はフラットだったとはいえ、肩を作っていく上で不安を覚えても不思議ではないが、当初からいい意味でこだわりを持っていなかった。
ジラルディ監督もこのことを高く評価する。
「彼はオープンなマインドでここにやってきて、自分のやり方を押し通さず、こっちのやり方に適応した。彼は準備が出来ているよ」
その言葉からは、高い能力を持っていると確信して獲得した右腕がその実力をしっかりと発揮してくれていることへの安心感が伝わってくる。
もちろん、その中で工夫することも忘れなかった。キャンプ終盤に入ると、ブルペンでの投球やキャッチボールでの力の入れ具合が明らかに変わった。強いボールを投げることで、ややブレの出ていたフォームを固めていった。