野球のグローバル化はサッカーに迫れるか? メジャーリーガーの出身地が偏る現状とMLBの取り組み
中国が野球大国になる可能性
ロイヤルズで先発を務めるジェレミー・ガスリーは、昨年オフに“親善大使”の1人として、中国にあるMLBアカデミーで現地の子供たちを指導した。以前にも、イタリア、オランダ、ベルギー、イギリス、スペインを訪問して指導した経験を持つガスリーは「中国での経験も、とても興味深い、自分にとってもためになるものだった」と話す。
「トレーニングキャンプに参加した子供たちは、みんな生き生きとしていたよ。もちろん、彼らの技術はまだまだ荒削り。中には、2、3年前まで野球のボールを見たことがなかった子もいるくらいだ。それでも、運動神経だったり、身体能力だったり、スポーツ選手として限りない可能性を秘めた子供たちばかりが集まっている。何よりも、彼らは真面目に一生懸命練習するんだ。ひたむきな姿を見ると、教えている自分の方が気付かされることも多いよ」
現在、世界経済の一大勢力としてのし上がった中国には、野球大国となり得る可能性も秘められてる。
「中国国内で野球の認知度が高まっていることは間違いない。これまで数多くのアスリートを輩出してきた国なんだから、野球に対する関心が高まって、競技人口が増えれば、将来的にメジャーリーグでプレーする選手も現れるだろう。20年後、30年後には、中国がドミニカ共和国やベネズエラのような野球大国になっている可能性だって十分ある。ヨーロッパやアフリカだって同じ。すぐに、というわけにはいかないかもしれないけど、メジャーリーグが今以上に国際化する日は、必ずやってくると思う」
メジャーリーガーの出身地が20ヵ国、30ヵ国と数を増す日が、WBCの参加国が増え、サッカーW杯のように世界中を巻き込んだ一大スポーツイベントになる日がやってくるのを、楽しみにしながら待ってみよう。
【了】
佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。