【今日は何の日?】広島の躍進に思う 炎のストッパー・津田恒実さんの存在
一歩も引かないファイティングスピリット
絶対に負けない。一歩も引かない。炎のストッパー・津田恒実さんはそういう男だった。記憶に残る名ストッパー。1986年には22セーブをマーク。1989年には28セーブを挙げて、セーブ王のタイトルを獲得した。しかし、その後、体調不良で本来の調子が戻らず、1991年、23年前の今日4月14日の巨人戦が生涯最後のピッチングとなった。
広島市民球場が最後の舞台だった。2試合目の登板となった津田さんが投げた球は140キロに満たない直球だった。本調子ではない状態で、マウンドに立っていた。ノーアウト2、3塁のピンチから原辰徳にレフト前ヒットを浴びた。ワンアウトも取れずに失意の交代。これが最後の姿だった。
津田さんのボールにはかつての強打者たちも舌を巻いた。ストレートの威力が絶頂だったのは1986年ころだろう。三冠王、史上最強の助っ人と言われた阪神のランディ・バースもそのストレートに力負けした。原辰徳はファウルした際に左手有鈎骨を骨折したという逸話も残っている。
91年4月中旬、津田さんはすぐに登録抹消になった。風邪をこじらせたと検査入院した。しかし、診断結果は悪性の脳腫瘍だった。何度もマウンドに戻ることを願った。一時は回復したが、闘病生活は2年以上続き、93年にこの世を去った。闘志あふれるマウンドさばきは、ついに見ることはできなかった。
カープナインは91年、「津田と一緒に胴上げをする」と一丸になった。そして見事に5年ぶりのリーグ優勝を果たした。カープはその時以来、優勝から遠ざかっている。
広島カープは昔も今も、ファンから愛される球団だ。引退した選手も、コーチも、それが故人であっても、深い絆で結ばれている。
殿堂入りを果たすなど偉大な投手だった津田さん。カープは今年、開幕から好調を維持している。炎のストッパーのようなファイティングスピリットを最後まで貫き、天国の津田さんと一緒に優勝の瞬間を分かち合う。広島のファンはその時が来ることを信じている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count