巨人復調の鍵を握る男 久保裕也が大歓声の中で746日ぶりに復帰登板
手術後、状態はなかなか上がってこなかった
シーズンオフに、痛みのあった股関節を手術する決断をした。翌年2012年の開幕には間に合うという判断だったが、術後、状態はなかなか上がってこなかった。キャンプは2軍スタート。開幕に照準を定めた。冒頭にもあったように4月には1軍にいたのだが、思い通りのボールは投げられなかった。
その理由として、股関節をかばった結果、右肘に支障が出ていたということがあったようだ。そして5月に右肘の手術を決めた。
復帰まで1年を要することは手術の前例を踏まえて覚悟した。前年の股関節の件もあったため、今回の右肘手術からの復帰は焦らずに治すことも考えていた。しかし、復帰まではつらく、長い道のりだった。
術後すぐは右肘に痛みが走る。野球をしていなくても痛い。練習も制限されるため、何もできない。少し快方に向かってもボールを投げることができず、フラストレーションがたまった。投げられるようになっても、距離は5、10、15メートルとゆっくりと伸びていく程度だった。
自分がマウンドに立つことを想像するのは難しかっただろう。しかし、ファンは信じていた。ファンの間では久保は「NO.1」の存在だった。
「一番、丁寧に多くサインを書いてくれるのは久保投手です」とあるファンは言った。
キャンプ地でも、宿舎の前でも、朝の散歩でも、足を止め、ファン1人1人に几帳面にサインをすることで有名だ。どんな多くのファンが並ぼうとも、球団スタッフの静止がない限り、その列がなくなるまでペンを走らせていた。怪我をして右肘が痛くても、リハビリばかりで心が折れそうなときでも、きちんと対応した。それだけファンに愛される選手である。