MLBにとっても他人事ではないNBAの人種差別問題 大リーグにおける人種差別撤廃への取り組みと現状
グローバル化を目指すMLBは今後どのような対応をしていくのか
自由の国、差別のない国を歌うアメリカだが、基本的に差別はまだまだ撤廃されたわけではない。
アフリカ系アメリカ人だけではなく、中南米からの移民やアジア系移民が疎外されることもあるし、白人の中でも特別な連帯感を持っているユダヤ系の人々が浮いてしまうこともある。「人種のるつぼ」を標榜する国は、やはり多種多様な人種が混在するだけに、ところどころでぶつかり合うこともあるし、好き嫌いも生まれる。
今回、NBAでの騒動を巻き起こしたスターリング氏の発言は、公の場でのものではなく、プライベートの会話の中で生まれたものだ。公共の場とプライベートの場と、状況に応じて言動を変える人も少なくない。
だからこそ、社会への影響力が強く、子供たちの憧れの的となるスポーツ界が率先して、他人種や他文化の存在を認め合うこと、そして互いに敬意を払うことを、社会のロールモデルとして示すと同時に、人種差別は許さないという毅然とした態度を表明することで、少しでも差別を減らすよう呼び掛けなければならないのだろう。
今回、NBAは迅速に厳罰を下す判断をした。グローバル化を目指すMLBが、同じような問題に直面した場合、どんな対処をなすか。そのような問題に直面しないことが一番だが、万が一起きた場合、人種差別撤廃に対するMLBの本気度が試されるはずだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。