岸孝之の快投で思い出される、西口文也が経験した4度の「ノーヒットノーラン未遂」
2005年には9回完全も味方の援護なく…
それから3年後、2002年8月26日のロッテ戦だった。西武打線は6点のリードで西口を援護。西口はこの時もテンポよく相手打者を打ち取った。9回ツーアウトまできたが、小坂にヒットを許し、記録達成ならず。当時は「まだ、(ノーヒットノーランは)僕には早いっていうことなんでしょうかね」と話し、経験を積んで次のチャンスをつかむことを心に決めた。
さらに3年の歳月が流れ、チャンスがやってきた。2005年の巨人との交流戦。初回から飛ばした西口は相手に付け入るスキを与えなかった。スライダーにフォークとキレがあった。与えた走者は清原和博内野手へのデッドボールだけ。1本のヒットも与えずに9回に入った。
ツーアウトまで取り、バッターは清水隆行外野手。甘く入ったスライダーを完璧に打たれ、ライトスタンドへのホームラン。再び「9回ツーアウト」の悪夢で記録達成を逃した。西口は打球の飛んでいった方向を呆然としながら目で追っていくしかできなかった。試合は1失点完投勝利。試合後には「チームが勝てたのでよかったんじゃないですか」と惜しさを押し殺していた。
そして、2005年の8月。本拠地での楽天戦だった。気合の入った西口は打者27人の相手を一人の走者も許さずに片付けた。普通ならば、この瞬間に完全試合の達成となり、マウンド上で歓喜の輪ができるはずだが、自軍も0点だったため、試合は延長戦に入ってしまった。
迎えた延長10回。先頭打者だった沖原にライト前ヒットを打たれて、完全試合は幻となった。それでも西口は10回を無失点。味方がその裏、1点を奪い、サヨナラ勝利。結果は10回、完封勝利だった。あり得ない試合展開で4度目の挑戦も敗れた。
この不運ぶりはその後、バラエティー番組などでも紹介された。野球ファンには西口にいつか夢をかなえてもらいたいという願いもある。岸も「西口さんに申し訳ないですね」と話すなど、今年で42歳の西口のノーヒットノーラン達成を待っている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count