蘇る名勝負の記憶 「野球の聖地」で松井秀喜氏が果たした懐かしの再会
松井がMVPに輝いた2009年のワールドシリーズ
象徴的なのは2004年のヤンキース対レッドソックスのリーグ・チャンピオンシップだ。ヤンキースは松井の大活躍で3連勝をマーク。第1戦と3戦は2ケタ得点。松井はホームランも放っていた。第2戦は3-1と辛くも勝利しているが、相手はペドロ・マルチネスで苦戦しながらの勝利だった。
そのペドロと3勝1敗で迎えた第5戦で再び対戦すると、松井は執ようなまでの内角攻めと得意のビーン・ボールで打撃を完全に狂わされてしまった。絶好調だった松井のバットも止まり、ヤンキースは3連勝の後の4連敗でワールドシリーズ出場のチャンスを逃した。松井にとっても、苦く、忘れがたい記憶となった。
その後、リベンジの時はやってきた。2009年のワールドシリーズ。松井のヤンキース最終年だった。
フィリーズに移籍したペドロ・マルチネスは第2戦に先発。松井はヤンキースタジアムの右翼席へホームランを放ち、苦い記憶を振り払った。第6戦でもホームランを放つなど大暴れし、ヤンキースを世界一に導いて、MVPを獲得。メジャーリーグでの戦いを振り返る中でペドロ・マルチネスの存在は松井にとって、切っても切れない人物なのだ。
「会うのは、あの時以来かもしれません」。クーパーズタウンでの再会は2009年以来5年ぶりのことだったと松井は振り返っている。ビーン・ボールの印象がよほど強かったのだろう。「ぶつけられるんじゃ……」という冗談交じりの言葉も最初に出てきた。
松井はOBの間でも人気があり、写真撮影などを求められた。こうして、かつて名勝負を繰り広げた相手と再び戦えるのも、松井が積み上げてきた功績があってこそだ。松井は野球の聖地・クーパーズタウンでの時間を噛みしめるように、楽しそうにプレーしていた。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count