首位打者8度の名打者の素顔は「真の野球マニア」 54歳の若さで死去したグウィン氏が野球界に残したもの

通算打率3割3分8厘の“安打製造マシーン”トニー・グウィン

 メジャー殿堂入り選手トニー・グウィン氏が16日、唾液腺がんと戦った末、54歳の若さで亡くなった。2009年にがんであることを公表して以来、抗がん治療を続けてきたが、残念な結果となってしまった。

 生前、同氏は唾液腺がんに罹った原因の1つは、長年続けた「噛みタバコ」にあるとしていた。メジャーでは噛みタバコをたしなむ選手が多いが、この慣習については、また別に機会に紹介することにして、グウィン氏の話に戻りたい。

 20年にわたる現役生活をパドレス一筋で貫いたグウィン氏は、“安打製造マシーン”の異名をとった名打者。ナ・リーグ首位打者に8度輝き、通算打率3割3分8厘という驚きの数字を残している。外野も全ポジションをこなし、ゴールドグラブ賞を獲得すること5度。オールスターにも15度選出され、背番号「19」はパドレスの永久欠番となっている。

 現役時代にグウィン氏と対戦経験のあるアスレチックスのメルビン監督は「いつも出塁しているイメージしかない」と話した。ジャイアンツで捕手を務めていたメルビン監督の口からは、感嘆の言葉しか出てこない。

「とにかく三振をしないんだ。対策なんてなかったよ。通算成績が物語るとおり。確実に自分の狙った方向に打球を飛ばせる素晴らしい打者だった。野球界に計り知れない功績を残した人物なだけに、損失は大きい」

 レンジャーズのマガダン打撃コーチは、1999~2001年の3シーズンをパドレスのチームメイトとして共に戦った。マガダン打撃コーチが、現在、レンジャーズの選手たちに教える打撃理念は、グウィン氏と交わした会話に基づくところが大きいという。

「今、打撃ケージの中で選手に教えることの大半は、トニーから教わったことだ。トニーは打撃ティーを使った練習をとても大切にしていた。打者として、非常に調和の取れた人物で、自分自身を知り尽くしていたから、打席ごとに調整するんじゃなくて、1球ごとに調整ができたんだ。そして、何よりもビデオを使った打撃分析に取り組んだ草分けのような存在だった」

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