実に722日ぶりの勝利 広島・福井優也が“復活”勝利を掴んだ理由
課題はメンタル ここからローテーションの一角に食い込めるか?
10年のドラフト1位で早大から広島入り。1年目は27試合に先発して8勝10敗だったが、2年目は先発10試合で2勝止まり。制球を乱し、四死球から崩れることが度々あり、低迷の原因になった。3年目の昨季は、先発マウンドはわずか1度だけ。リリーフで11試合に投げたが、防御率は8・69。白星はなく「毎年が勝負。もうチャンスはないんじゃないか」とも思ったという。
「彼の場合は精神的なもの。ボールは素晴らしいのに、状況や点差によって、考えすぎて打たれる。自分から崩れているだけ」
そう分析するのは山内泰幸投手コーチだ。この日、最速148キロをマークしたストレートをはじめ、ボール自体は高いレベルにあるのだが、メンタル面で、その力を発揮しきれていなかった。
「(これまで1軍のマウンドでは)よそ行きの自分になる部分があった。2軍でやってきたことをやろうと思っていた。テンポ良く投げることをやってきた。逃げて四球より、攻めて打たれた方が割り切れる」
ファームで課題の克服に取り組んできた成果が、ようやく結果に表れた。この日の初回も「緊張して、ビビっている自分がいた」と悪い部分は顔をのぞかせたが、乗り越えることが出来たのも、精神面の成長があったからこそ。「この感覚を覚えてくれたら。ああいう感じで投げてくれたらいい」と山内コーチも評価した。
今季、広島で完投勝利を達成したのは、ルーキー大瀬良とバリントンの2人だけ。エース前田も成し遂げておらず(前田は4月27日の巨人戦で9回無失点に抑えるも、延長戦に)、3人目だ。手薄になっている先発陣の救世主となるだけでなく、登板過多だった救援陣に休養を与えた価値は大きく、野村監督も「待望の投手が出てきてくれた」と喜んだ。
「まだこれからだと思う。慢心せずに、どんどんやっていきたい」
お立ち台でファンにこう誓った通り、大事なのは、ここから。ローテの一角として、白星を積み重ねる姿を、首脳陣も、ファンも、そして福井自身も期待しているはずだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count