トレード市場で渦巻いた各球団の思惑 世紀の対決となる可能性も出てきた「アスレチックスvsタイガース」と来季の優勝争いを見据える昨季王者

レッドソックスは叩き売りに踏み切ったわけではない

 一方、主力を大放出したのが、ディフェンディング王者のレッドソックスだ。昨オフの補強が外れ、残った優勝メンバーの多くが昨季ほどの数字を残せず、スタートからつまづいた。

 現実問題として、今季のプレーオフ出場、ひいては連覇をあきらめなくてはならない状況を迎え、目標を来季以降のチーム作りに転換したわけだが、ここで注目しておきたいことが1つ。レッドソックスは「Fire Sale」と呼ばれる叩き売りに踏み切ったわけではない。

 先発の柱だったレスター、ラッキーを手放した代わりに手に入れたのは、海のものとも山のものともつかぬ“有望株”ではなく、メジャーで実績を持つ戦力だ。レスターの代わりにセスペデス、ラッキーを送ったカージナルスからは先発ケリーと一塁・外野をこなすクレイグがやってきた。

 つまり、カブスやアストロズのように、年月をかけてチームを根本から再建しようというのではない。今季をあきらめただけで、来季には優勝争いに戻る計画だ。だからこそ、即戦力としてハマる選手を見返りに求めたというわけだ。

 トレード期限が過ぎたからといって、各チームの戦力補強が終了したわけではない。今後はトレードを行う際にウエーバー手続きを経なければならないが、8月31日までに移籍した選手は新チームでプレーオフに出場できる資格がある。8月中のトレードは、ライバルチームから横やりが入る可能性もあるが、比較的静かに7月を終えたナ・リーグ各球団、ロイヤルズ、ブルージェイズあたりの動きに注目してみると面白いかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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