160キロ超の剛速球や長打力だけではない 大谷翔平の最大の才能とは

大谷の急激な進化を可能にしているモノ

 投げては最速162キロの直球を武器にスコアブックに「K」の文字を並べる。打っても左腕、右腕の両腕を苦にしないシュアなバッティングで勝負強さを発揮する。それが日本ハムの大谷翔平だ。

 プロ2年目の今シーズン。周囲の雑音は、ほぼ聞こえなくなった。開幕から先発ローテーションを守り続け、前半戦だけで9勝(1敗)。オールスター戦で投げ込んだ渾身の速球は自己最速を更新する時速162キロを記録した。リーグ戦でも8月3日のソフトバンク戦で161キロを叩き出し、公式戦での日本人最速記録に並んだ。

 打席に立っても、出場機会に限りがある中、8月18日現在までで35試合にスタメン出場。打率.274で、6本塁打24打点の数字を残している。

 二刀流は不可能――。劇画の世界――。そんな議論はもはや不要だろう。その右腕とバットで自らが進む道を肯定させた。

 他を圧倒する剛速球。キレ味抜群で多彩な変化球。9回を投げきるスタミナ。そして巧みなバットコントロールに天性の長打力。若干20歳の若武者が備える魅力は尽きない。もう1つ、大きなストロングポイントを有する。激辛すぎる自己評価だ。自らに課したあまりに高いハードルこそが急激な進化を可能にしているのかもしれない。

 8月17日の西武戦。その試合に先発登板した大谷がその長所をいかんなく発揮した。初回に、「おかわり君」こと中村剛也に先制3ランを浴びた。2回以降も常に走者を背負い、与えた四球はプロ入り後では自己最多8を数え、球数も最多の149球に達した。

 それでも7回を4安打3失点。味方が同点に追いついた直後の6回裏には得点圏に走者を置いた勝負所の場面で、この日最速の159キロを連発させた。チームは延長12回の末に3-3で引き分けたが、数字だけを見れば、立派なクオリティースタート(6回以上を投げ、自責点3以下)だ。

 だが、試合後、大谷の表情はいつになく険しかった。適時打が出なかった打線の責任を背負い込んだ。

「全然ダメ。きょうぐらいのピッチングなら(リズムも悪く)点も入らない。野手だったら(自分は)守りたくないピッチャー」

 そこまで自らを責めた。

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