大阪桐蔭の夏制覇を支えた主将・中村誠の戦い

心を鬼にしたキャプテン

 大阪桐蔭高校が第96回夏の甲子園で頂点に立った。1点を追う苦しい展開だったが、7回2アウト満塁からキャプテンの中村誠が執念でセンター前に落とし、決勝の2点タイムリー。深紅の大優勝旗が2年ぶり(4度目)に同校に戻ってきた。

 優勝を決めたとき、中村の目には涙が浮かんでいた。苦しみから解放されたのだった。2学年上の阪神の藤浪晋太郎投手、1学年上の西武の森友哉の在籍時のチームのように夏の甲子園に出られるのか。そんな不安の中で新チームはスタートしていたからだ。中村は「ここまで来るのにどれだけきつい練習をしてきたかわからない。歴史に名を刻みたい」と意気込んで試合に臨んでいた。

 中村は勝てなかった昨年秋を思い出していた。選抜出場の履正社にコールド負け。個々の能力は全国レベルなのに、我が強すぎてチームがまとまらない。自分だけの練習ばかりで西谷浩一監督からは「この取り組みでは日本一なんかなれない」と弱いチームだと指摘された。主将の中村は悩んだ。

 寮に戻っても、考えるのはチームのことばかり。偉大な先輩が築きあげてきた歴史に泥を塗ってしまうのではないか。リラックスできる風呂場でさえも野球のことばかり考えた。そんなとき、仲の良い同学年の大浦彬投手から「思ったことを言って、自分が先頭に立っていくキャプテンでいいんちゃう? 俺はどんな形でもついていくから、心配せんでいい」と声をかけられ、心が楽になった。

 親友からの言葉で根が優しいキャプテンが心を鬼にした。

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