地元メディアからも「来季も残すべき」との声が上がり始めた和田毅 ベテラン左腕の好投を支えるものとは
オリオールズの「痛い誤算」とカブスの「うれしい誤算」
そんな中、先日8月24日、古巣オリオールズ戦に先発した和田が、6回までノーヒットノーランという快投を演じた。この試合で4勝目を挙げた左腕は、試合後にこんなことを言っている。
「まったくオリオールズの戦力になれずにチームを去ることになってしまったので、やっぱり、自分のこういうピッチングができるんだ、だからオリオールズは和田を取ったんだな、と言ってもらえるようなピッチングを見せるのが、自分の今日の目標だった。そういうピッチングができたんじゃないかと思いました」
敵将ショーウォルター監督が「まさに、うちが契約した時の投球だった。速球の制球力は抜群で、日本人投手特有の伸びのある球を投げていた」とうなったのだから、和田も本望だっただろう。
先発ローテーションに加わった7月23日以来、8試合に先発して4勝1敗、防御率2・56の好成績。この安定感は、オリオールズとカブスの両軍にとって違った意味の「誤算」になったはずだ。もちろん、前者にとっては「痛い誤算」、後者にとっては「うれしい誤算」だ。
昨オフ、和田との契約で球団オプションを行使しなかったオリオールズだが、球界関係者の多くは新たにマイナー契約を結び直すものだと思っていた。報道陣を煙に巻く嫌いのあるデュケット編成本部長だが、昨年11月のGM会議中には「そのつもりだ」とマイナー契約を結び直す見通しを語っていた。
通称トミー・ジョン手術を受けた投手のパフォーマンスが安定するのは術後2年目と言われていることを考えれば、和田の獲得に2年815万ドルという大金を投じたオリオールズは、マイナー契約という形でもう1年“様子見”をしても損はなかっただろう。だが、その賭けには打って出なかった。
逆に、その賭けに乗ったがカブスだ。
今年1月、ホイヤーGMは「日本にいる時から注目していた投手。手術を終えて戦列復帰からまだ1年経っていないし、昨季も終盤は3Aで調子を上げていた。正直なところ、オリオールズが再契約しなかったことに驚いている。日本の時と同じようなレベルに戻る可能性は十分にあると思う。マイナー契約を結んで損はないはずだ」と獲得理由を話していたが、現在のところ、その読みは当たったと言っていいだろう。
手術後にボールすら握れない時間を過ごした和田は、常に感謝の気持ちを持ちながらマウンドに上がっている。24日の登板で、その気持ちはオリオールズとカブスの両軍に対して向けられていた。
「自分にとって、このメジャーリーグの世界に来ることになったのは、やっぱりオリオールズのおかげ。今、メジャーの舞台に立っているっていうのも、オリオールズが自分をメジャーの世界に呼んでくれたっていうのが1番。その中でカブスが、結果が出ない自分を拾ってくれた。やっぱり両方に対して恩返しというか、感謝の気持ちを込めてピッチングをしようと思いました」