黒田、不運さを象徴するマウンド 全30球団勝利を逃すも「記録のために野球をやっているわけではない」
巧みな投球術で7回2失点と好投も快挙ならず
ヤンキースの黒田博樹投手は28日(日本時間29日)、敵地でのタイガース戦に先発登板し、7回を4安打2失点、4奪三振1四球で降板。好投したが、勝敗はつかず、日本人初の5年連続2桁勝利となる10勝目はならなかった。また、大リーグ14人目、日本投手初となる全30球団からの勝利も持ち越された。
8月5日に対戦し、7回3失点に抑えていたタイガースに対して「前回から1カ月もたたないうちに対戦することになったので、裏をかくというか、同じことをしていても相手も研究してくる。目先を変えた投球をするしかない」と対策を練っていた。
速いスプリットと、遅くて落差の大きいスプリットを投げ分けながら普段より多めに使う、巧みな投球術で相手打者のタイミングを外した。
それだけに、2-1とリードした5回の失点が悔やまれる。
先頭打者に四球を与えると、暴投などで2死三塁のピンチを招いた。ここで1番デービスに対し、1ボールからのシンカーが甘く入り、同点となる右前適時打を許した。勝利投手の権利目前で追いつかれてしまい、「2点目の取られ方がもったいなかった。試合の展開上、すごく大きかった」と悔しさを表した。
結果的にこの1点が響いた形だが、7回まで試合をつくっていただけに、これまで何度も援護に恵まれない登板が多かった右腕の不運さを象徴するようなマウンドだった。1990年以降のヤンキースでベストの(28日の試合前まで)防御率3.49という数字を残しながら、ヤンキース移籍後の2012年以降、36勝32敗と思ったほど勝てていないところに、不運な黒田の境遇が際立つ。
降板後にヤンキースは2-3でサヨナラ負け。黒田自身は全球団勝利という珍しい記録もならなかったが、「記録のために野球をやっているわけではない。(チームが)勝てなかったのは残念」。好投が報われなかった登板は何度も経験している。それよりも、プレーオフの座を争うタイガースに1勝2敗と負け越した敗戦の重みをかみしめているようだった。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count