山本昌は“打者泣かせの投手” 今季最年長勝利を塗り替えた左腕の長寿の秘密

速いけど遅い、遅いけど速い“最強のストレート”

 理論的にはボールの回転数が多いほど、バックスピンがかかり、いわゆるノビのあるストレートになる。1秒あたり37回転が平均とされる中、山本昌は最近の計測で53・5回転という数字を叩き出している。速球投手の代表格でもあるダルビッシュ有や藤川球児でも40台中盤であることを考えれば、いかに驚異的な数値かがわかるだろう。

 さらに186センチ、87キロの大柄な体を生かした豪快なフォームもその威力を増大させている。

 対戦したある選手は「山本さんのすごいところは150キロを投げそうなフォームで、130キロが来ること。だけど、130キロのタイミングで打ちにいくと手元で伸びてくる。こんなに打者泣かせの投手はいない」と証言する。速いけど、遅い。遅いけど、速い。そのギャップが、数十年にもわたって多くの強打者を苦しめ続けている。

 1軍昇格を決めた今年8月26日のウエスタン・リーグ、オリックス戦。5回2失点と結果こそ残したが、直球で空振りやファウルが取れず、主軸に対してはかわすような投球が目立った。このままでは1軍で通用しないのではないか。そんな周囲の不安も、舞台を1軍に移せば経験のなせる業なのか。真っ向勝負でアウトを重ねていく姿は、頼もしさを感じさせた。

 最強の“ストレート”に衰えは見られない。来季、50歳での勝利という偉業も、決して夢物語ではなさそうだ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY