青木宣親も認めるロイヤルズPO進出の原動力 才能ある若いチームを後押しした42歳ベテランの存在

青木「このチームに足りなかったものをイバネスが補ってくれた」

 チームはこの日から5連勝して勝率5割超えを果たすと、再び借金生活に転じることなくプレーオフ行きの切符を手に入れた。青木は、この時のイバネスのスピーチを「チームみんなの目を覚まさせた」と振り返る。

「このチームに足りなかったものをイバネスが補ってくれた。みんな言いたいけど遠慮して言えなかったことを、イバネスが代弁してくれたような感じかな。僕もチームに来て1年目っていう遠慮があったし、(先発の)シールズも自分の成績がなかなか上がらずに言い出せない感じがあった。やっぱりイバネスは誰もが認めるベテラン選手。経験を積んだ分、言葉に重みがあるし、みんな気持ちを奮い立たせられるような思いがあったよね」

 美味しい餡子を作るコツは、少量の塩だという。一流の小豆を使うだけでも、一流の砂糖を使うだけでもダメ。すべての味を1つに調和させるために必要なのが、甘さを引き立てる塩だ。

 野球のチーム作りも、それに似ているのかもしれない。若くていい素材が揃うロイヤルズが、チームとしての完成度を高めるために必要だったのは、ベテランの存在=塩だった。

 シーズン途中でひと味足りない事実に気が付き、イバネスを獲得したムーアGMの手腕もさることながら、期待通りの役割を果たし、チームの精神的支柱となったイバネスの存在こそが、今季のロイヤルズの原動力になった。日に日に強まったチーム力で、プレーオフをどこまで勝ち進むのか。ロイヤルズの快進撃に期待したい。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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