大谷翔平だけじゃない 「勝てる男」へ完全覚醒、日本ハム・中村勝がCSでもキーマンの1人

栗山監督もようやく評価「勝は1つ上がった」

 プロ野球界を席巻し続ける大谷翔平。同じ日本ハムの中で、2014年シーズンに完全覚醒した若手投手がいる。中村勝だ。

 5年目の22歳。9月28日のソフトバンク戦で5回4安打無失点。今季8勝目を飾った。自身初めてとなる中4日での先発マウンド。そこでチームを勝利へとけん引。クライマックスシリーズ(CS)での活躍が最も期待される投手と言っても過言ではない。

 昨季までは4年トータルでわずか4勝。今季、一気に勝ち星を上積みした。驚くべきは、その勝率。8勝2敗で実に8割を誇る。中村が先発した試合はチームとしても13勝5敗。いわゆる勝てる男。勝たせられる投手だ。

 かつて、ロッテで長くエースの座に君臨していた日本ハムの黒木投手コーチは「変化球でストライクが取れるようになった」と今季の躍進を分析する。

 直球のアベレージは130km台後半。決して速くはない。だが、90km前後のカーブが実に効果的。打者のタイミングをズラし、直球の体感速度もアップさせる。過去には星野伸之、今中慎二。中村とは違い左腕だが、その姿がフラッシュバックする。その緩急を自在に、そして巧みに操っている。

 今季、その先発枠という名のポジションが確約されていたわけではなかった。平坦な道を歩んで来たわけでもない。むしろ、イバラの道か。開幕から先発ローテーションの一角には加わった。それでも週に1度の先発登板は約束されていなかった。ほかの先発投手の登板を優先させるため、先発登板した直後に2軍落ち。いわゆる投げ抹消。再び次の登板機会まで2軍で調整を続ける。そんなことも少なくなかった。

 6月3日の広島戦では3回3分の0を2失点。6月14日のヤクルト戦では2回2失点。序盤のピンチで即、マウンドを降ろされる場面も多かった。首脳陣からの信頼は厚くはなかった。だからこそ、この8勝には数字以上の価値がある。

 かわいい子には旅をさせよ――。今は車社会。交通手段も豊富な現代では通用しないが、中村にはこの諺がピタリとハマる。期待が大きいゆえに、易々とポジションを与えない。ソフトバンクとの試合前、マウンドに登る中村について栗山監督は「自分で(先発の座を)勝ち取った。勝は(先発のとしての格が)1つ上がった」。やっと、そう評価した。

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