得失点差に見る「混セ」到来の予兆 巨人史上2番目に“きわどかった”今季の優勝
「10・8決戦」の1994年に次いで少なかった巨人の総得失点差
巨人がレギュラーシーズン全日程を終えた。2位に7ゲーム差をつけ、3年連続36回目の優勝。ここ8年だと6度の優勝という成績は、V9時代以来の黄金期といってもよいものだろう。しかし、広島や阪神に詰め寄られる場面もあった今シーズンを、圧倒的な制し方ではなかったと評価する声もある。
そうした印象を裏付けるのが得失点差だ。
今シーズンの巨人の得点は596、失点は552でその差は44点。これはセ・リーグ6チームの中では最も大きいのだが、巨人が重ねてきた36度の優勝時の数字の中だと、下から2番目の数字なのだ。
得失点差が最も小さかった巨人の優勝は1994年で33点。これは「10・8決戦」で知られる、中日との大接戦を制した時の記録だ。最終戦までもつれたあのシーズンの次にきわどい優勝だったと、得失点差からだと見なせるのである。
とはいえ、得失点差をそこまで意味のある数字だと考えてプロ野球を観ている人はあまりいないはずだ。プロ野球は勝ちの数を競うもので、得失点差を競うものではない。大勝も1点差勝ちも、1勝は1勝だ。
しかし、MLBの多くのチームは得失点差を重視している。「年間総得失点差の大きさは、だいたいにおいて年間勝率に比例している」という理論が活用されており、競争力を表す数字としてチームづくりの基準にもなっている。
「得失点差がだいたいにおいて勝率に比例している」とはどういうことか。
イメージをつかんでもらうために、セ・パ2リーグに分立された1950年以降の勝率と得失点差の関係を図表にした。
グラフはきれいな右肩上がりになっており、得失点差の大きさが、ある程度勝率を高めていることがわかるだろう。点差を広げて勝っていけるチームは多くの場合で上位になる。広げられなければ下位になるという、当たり前と言えば当たり前の事実を示している。
そして、大差で負けることもあるが僅差の試合を上手に拾うといったスタイルでシーズンを戦い抜いて好成績を残すのはかなり難しいことも示している。もし「試合巧者」として戦い抜いたチームが一定数存在するのなら、グラフはもっと複雑な形を見せているはずだ。
アメリカで重要視されている得失点差がチームの競争力を示しているという理論は、こういった過去の記録の精査から導き出されているのである。