頭角を現した慶大卒のスター候補生・白村明弘 日本ハムの下剋上に貢献できるか
「あんなドキドキした試合はない」
スター候補生が北の大地で着実に力をつけてきた。クライマックスシリーズ(CS)に進出する日本ハムの新人右腕・白村明弘がその人だ。
最大の魅力は150キロを超えるストレート。躍動感溢れるマウンドさばきが見る者の目を釘付けにし、心を躍らせる。それを栗山監督は「投げっぷりがいい」と表現する。次代のストッパー候補との呼び声も高い。
その片鱗を見せつけたのが9月30日の西武戦。これ以上ない重圧の中、若干22歳の右腕はマウンドに登った。前日、日本ハムはCS出場を決めていた。言うならば、残るリーグ戦は、そこへ向けた「調整の場」であってもいいはず。だが、そんな雰囲気ではなかった。
この日は、今季限りでの現役引退を表明している稲葉篤紀のメモリアルイベント開催日。そのゲーム。2-3で迎えた7回裏2死2塁で真打ち登場。「代打・稲葉」がコールされた。そこで稲葉は劇的な逆転2ランを右翼ポール際へと叩き込んだ。4-3と試合はひっくり返り、迎えた9回のマウンド。そこに白村の姿があった。
稲葉のヒーローインタビューは確定的だった。誰もが期待している。負けられない試合。負けちゃいけない試合。会場には勝利を疑う空気など微塵もなかった。これほどのプレッシャーはない。ルーキー右腕にとっては、なおさらだ。
そこで白村は踏ん張った。むしろ、完璧に火消し役を務めてみせた。西武にとっては1番から始まる好打順。それを力でねじ伏せた。1番の栗山を一ゴロ。そして売り出し中の代打・森、3番の浅村を連続の 空振り三振に切って取った。
白村は登板翌日、振り返った。
「絶対に打たれちゃいけないところでしたよね。稲葉さんのためにも。あんなドキドキした試合はないですね」
だからこそ、重圧をはねのけた瞬間の達成感、充実感はハンパじゃなかった。記念すべき、プロ初セーブもついた。