“主観頼み”の守備評価の数値化は可能か? データで見る優れた内野手の守備範囲
得意ゾーンが対照的だった片岡と菊池
ここで「サードの積極性の低さが、安達や坂本に多くの打球処理を可能にしているのでは?」という疑問が湧くかもしれない。
だが、サードとショート双方が打球を処理したゾーンについては、互いが打球を処理しアウトにした回数の比率に合わせて、全体の本数を互いのポジションの責任分として割り振っている。
例えば、あるゾーンに800本の打球が飛び、300本がヒットになり、400本をショートが100本をサードが処理しアウトにしたとする。
この場合800本の打球のうちの80%(400÷500)の640本(ヒット240本+アウト400個)がショートの、20%の160本(ヒット60本+アウト100個)がサードの責任打球と設定している。そして、このゾーンは平均的なレベルのショートが打球の62.5%(400÷640)をアウトにすると設定される。
全打球に対するショートがアウトにした割合だと50%(400÷800)。ショートの責任打球をリーグ全体の傾向に従って絞ることで、基準となる平均的なアウトとなる割合を調整している。こうした計算処理を挟むことで、守備範囲が重なるゾーンの評価でも、他ポジションの影響を受けないための配慮が、設計に施されている。
安達や坂本がサードに近いエリアで「13.8」「9.2」という大きな数字を記録しているが、これは両選手の能力の反映で、このゾーンのゴロをかなりの頻度でアウトにしていたことを示している。
セカンドは片岡治大(巨人)と菊池涼介(広島)、また本多雄一(ソフトバンク)が突出していた。
片岡と菊池は対照的な処理を見せている。片岡が一塁方向の打球を極めて高い確率でアウトにしていたのに対し、菊池は二塁方向のセンターに抜けそうな当たりをよくアウトにしていた。
巨人はショートの坂本、セカンドの片岡の守備範囲が他チームに比べてかなり広かった様子がうかがえ、守りを支える大きな要因になっていたようだ。