「捕手・阿部」がもたらした巨人の黄金期 一塁コンバートで球界は転換期へ?
捕手の平均成績を圧倒的に上回ってきた阿部
出塁力、長打力双方を加味し、打者が打席当たりどれだけ得点創出力を発揮したか(チームの得点増に貢献したか)を評価するweighted On Base Average(wOBA)という指標で、阿部と捕手の値の平均を比べてみる。入団以降ほとんどの年で平均を引き離しているのがわかる。
wOBAと打席数から創出した得点を概算すると、阿部と、阿部と同じ打席数に立った平均的な捕手との差は膨大だ。2012年~2013年などは捕手1ポジションだけで約70点の差を生み出している。捕手は攻撃力を望めないポジションゆえに、強打の捕手がいると大きな見返りを生むことを見事に表している。チームの年間の総得点、総失点のボリュームをイメージすれば、阿部がいかに突出していて、リーグ全体のバランスを傾かせる存在だったかもわかるだろう。
視点を変えれば、他球団は阿部のいる巨人に対し、得点増もしくは失点減で40~50点を、阿部がピーク時はそれ以上を、追わねばならないシーズンが続いていたことになる。他球団のフロントは捕手以外の8ポジションで40~50点差を埋める算段をつけなければ巨人への挑戦権すら得られない状況だった。阿部が主力化して以降これを実現できたのはわずかな球団しかない。
また忘れてはいけないのは、阿部の存在が編成における柔軟性という別のメリットももたらしていたことだ。阿部による40~50点分もの優位性が、若手の抜擢がしやすい環境をつくり、巨人を「育てながら勝てる」チームにしていた。育成の比重を高め、成長の見込める選手に一定の出場機会を与え経験を積ませながら戦い、かつ勝ち切ることで築かれた巨人の黄金期は「捕手・阿部」の存在なくしてはありえなかった。